前回に引き続き、BABOK Guide V3の「基礎コンピテンシ」について解説する。今回は、「行動特性」「ビジネス知識」という基礎コンピテンシを取り上げる。

基礎コンピテンシ2:行動特性

 行動特性はビジネスアナリシスに特有なものではない。しかし、ビジネスアナリシスの実践における個人の有効性を向上させるものと判明している。行動特性はすべてのビジネスアナリストのスキルセットの核心的存在である。ここで取り上げる行動特性はそれぞれ、ビジネスアナリシスの成果に大きな影響を与える。

 行動特性のコアコンピタンスは以下の通り。

(i) 倫理
(ii) 個人的アカウンタビリティー
(iii) 信頼感
(iv) 仕事の整理とタイムマネジメント
(v) 適応性

 行動特性は、ビジネスアナリストとして根本的に要求される行動・態度をまとめたもの。ステークホルダーとの関係をよくするには極めて重要である。これらができていなければ、ビジネスアナリストとはいえない。

(i)倫理
 解説不要だが、実践できていなければ何も意味がない。倫理的行動は、単に倫理を守るだけでなく、提案ソリューションによって、すべてのステークホルダーグループができる限り公平に扱われるように仕事をすることだ。公平に扱えば、影響を受けるステークホルダー全員が意思決定の理由を理解できるようになる。

(ii)信頼感
 信頼感とは、人が信頼するのにふさわしい、という認識である。信頼できると思われるビジネスアナリストは、多くのステークホルダーがチェンジに対して自然と抱く抵抗を和らげる。

 「倫理」と「信頼感」は行動できていなければ意味がない。どんなに高度な分析手法をマスターしていても、ステークホルダーから信頼されていない限りビジネスアナリシスは実践できない。ステークホルダーから「あの人が言うのだから大丈夫だ。やってみよう」と思ってもらえることが重要だ。

(iii)適応性(新コンピテンシ)
 これもBABOK Guide V3で追加されたコンピテンシである。適応性はテクニック、スタイル、方法およびアプローチを変更する能力で、大変重要である。人を見てその人に適した方法で接することが重要。例えば、ステークホルダーにとって好ましいやり方でタスク完了の意欲を示せれば、ビジネスアナリストは、提供するサービスの質を最大限に高められる。また、異なるステークホルダーは、ビジネスアナリシスのあるテクニックに対して異なるレベルの快適さを感じる。ある人は視覚的なモデル、図形および絵などのビジュアルに表わされた情報に、よりよく応答する。また別の人は口語的な文章表現をより快適に感じる。どのテクニックが有効で、またどれが有効でないかを決めることができ、それに従って適応できれば、対人関係において成功する可能性が増す。ステークホルダーとのコラボレーションに大いに役に立つ。