2015年4月25日に、IIBA日本支部が開催した「BABOK V3発表記念公開セミナー」で、基調講演に登壇した米カリフォルニア州立大学ポモナ校の一色浩一郎教授は、米国の実情を次のように説明した。

「売上高に対するIT投資率が、日本の1.2%程度に対し米国が4%を超えるのは、収益率が3倍以上と高いためである。それは戦略的にIT投資を行っているからであり、仕事の効率化程度の戦術的なことには投資しない。IT投資の8割が保守運用ということはあり得ない。米国の経営者は、企業の利益に貢献しないものには投資しない」

 ここで、変容したビジネスアナリシスの定義を改めて振り返ってみよう。それは下記の通りだ。

 ニーズを定義し、ステークホルダーに価値あるソリューションを推奨することにより、エンタープライズにおけるチェンジを可能にする専門活動

 新しいビジネスアナリシスの定義は、まさに一色教授が説明した米国の実情を端的に言い表している。BABOKは知識体系なので、過激な表現はせずに「ステークホルダーに価値ある…」と表現しているが、一色教授の言葉では「企業の利益」を意味する。

 前回はBABOK Guide V3の全体像を解説した。今回から各知識エリアの内容に踏み込んで解説していく。知識エリアの構造は従来のV2と似ているが、ほとんどの知識エリアの名称と内容が変わっている。今回は、「引き出しとコラボレーション」という知識エリアを取り上げる。