人や装置の動きを捉えて生産性を高める。こうした狙いから動線分析に着目するのは、生産性に厳しい製造業や物流業だ。まずは工場内物流の効率化に活用するクボタの取り組みを見てみよう。

 生産ラインの脇に配置した部品の在庫置き場で、部品Xの在庫が底をついた。部品の保管場所で待機する作業員は、在庫切れの連絡を受けると急いで部品Xを搬送車に積み込み、在庫置き場まで運んで納入した。ジャスト・イン・タイムの施設内物流は極めてスムーズに見える。ところが、動線分析を実施すると気づかなかったムダが見つかる─。

 農業機械大手のクボタは2014年10月、田植え機やコンバインを生産する宇都宮工場で搬送車の動線分析を開始した。「工場内物流を改革して1年以内に経営的な効果を出す」。取り組みを主導する生産管理課の山本康之氏は、こう意気込む。

 クボタでは以前から業務改善活動の一環で作業員の動きを分析してきた(図1)。作業員をビデオカメラで撮影し、再生映像から「一筆書き」のような作業動線を手書きで作成。この動線データを要素作業に分解し、それぞれの作業時間を測定して、ムダを見つける。

図1●以前から手描きで動線データを作成して手元作業を改善していた
図1●以前から手描きで動線データを作成して手元作業を改善していた
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 ただし、ビデオカメラを使った手作業の動線分析は、データ収集から分析結果を得るまで時間を要する。「30分の作業工程を分析するのに、日常業務をこなしながら少なくとも1週間はかかる」(山本氏)。