SEとして充実した日々を過ごしていたら、ある日突然、上司に呼び出されて「営業を担当してほしい」と言われる。あなただったら、どうしますか?

 IT業界では、開発に従事する技術職から販売を担当する営業職に転向するという例が珍しくありません。商材はハードウエアやソフトウエアパッケージ、個別開発のソフトウエアから、最近ではクラウドサービスや各製品の組み合わせまで様々です。

 SEから営業になり、これらの商材をバリバリ売りまくっている人は当然います。その一方で、「どのように営業すればいいのか分からない」「頑張っているけれど成果が出ない」と悩んでいる声もよく聞きます。

いきなり新規事業部門に配属、相談相手はゼロ

 筆者は20代でSEから営業職に就いた「転向組」です。最初のうちは苦労の連続でした。

 最初に配属されたのは新規事業の部門で、営業職は自分一人。先輩や同僚はいません。どう営業すればいいのか、そもそも営業とは何をするのか全く分からないのに、誰かに聞くこともできない。ほとほと困り果てたことを昨日のように思い出します。

 今から考えると、それがかえって良かったのかもしれません。上司や先輩がいて、言われたとおりに行動していただけだったら、「なぜそうするのか」という理由を考えないまま、営業を担当していたかもしれないからです。

 相談する相手がいない以上、自分で考えて行動するしかありません。何をすべきなのかをゼロから考えて、仮説を立てて試してみる。うまくいけばそのやり方を取り込む。駄目ならその理由を考え、違う方法を試してみる。こうした作業をひたすら繰り返しました。

 そのことを通じて、どう営業すれば成果が出るのかという、営業の方法論がだんだん見えてきました。その後、SI(システムインテグレーション)事業やパッケージ事業の立ち上げを担当し、並行して営業や事業企画に課題を抱えるIT企業に対するコンサルティングにも取り組み、今ではクラウド事業の立ち上げに従事しています。