グループ共同システム「ユニティ」(関連記事:会社合併を伴わないシステム統合の苦難)開発の経験を生かし、ITガバナンスの強化や、グループ一丸となるための体制作りに取り組んだMS&ADインシュアランスグループホールディングス。事業再編に伴い2015年5月に終了したシステム改修では、この取り組みを生かし、本番環境での「障害ゼロ」を達成した。

 MS&ADインシュアランスグループホールディングス(MS&ADホールディングス)は2013年10月から、グループ内の各事業会社の強みを生かす形で事業や販売チャネルの再編を開始した。

 例えば三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険の間で、貨物・海上保険など一部の保険商品の開発機能や契約を統合した。海外事業や管理部門も統合し、効率化を進める。事業再編やそれに伴うシステム統合などにより、当初計画では最終的に2011年度比で年間約500億円のコスト削減を見込んでいる。

 事業再編は2015年5月現在も継続して進めているが、再編に伴うシステム改修自体は2015年5月に完了している。2013年10月にプロジェクトチームを立ち上げ、約700人の社員と約80社のベンダーが関わった。開発規模はステップ数が約110万ステップと、大規模なものだった。

 システム改修では、ユニティ開発を通して強化したITガバナンスの強化が生きた(関連記事:システム統合の教訓生かしガバナンス強化)。MS&ADホールディングス 総合企画部 IT企画室の中村尚史次長は、「グループ各社間、あるいはビジネス部門や情報システム部門の間で、何かあればすぐにコミュニケーションを取る枠組みができていた。問題発生時も各担当がすぐに集まることで対処できた」と話す。

 MS&ADホールディングス 総合企画部部長 兼 IT企画室長の川島祐次郎氏は、ユニティ開発時に改訂した開発ルールに各現場が慣れていた点も大きかったと述べる。「開発の各工程でビジネス部門や情報システム部門が何をどこまで詰めなければいけないか、といった理解がかなり進んでいた」(川島氏)。

ユニティ開発時の体制を継承

 システム改修の際は、ユニティ開発時に構築した開発体制を継承した(図1)。ビジネス部門と情報システム部門でシステムの内容を協議するワーキンググループ(WG)体制については、定期的な人事異動で要員の入れ替わりはあったものの、ユニティ開発時の体制をほぼそのまま継承した。

図1●事業再編に伴うシステム改修における、ユニティ開発の教訓を生かすための主な取り組み
図1●事業再編に伴うシステム改修における、ユニティ開発の教訓を生かすための主な取り組み
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写真1●MS&ADシステムズ ITマネジメント本部・機能別再編推進室の阪本栄二上級マネージャー
写真1●MS&ADシステムズ ITマネジメント本部・機能別再編推進室の阪本栄二上級マネージャー
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 MS&ADシステムズ ITマネジメント本部・機能別再編推進室の阪本栄二上級マネージャーは、ユニティ開発時のWG体制を継承したことで「プロジェクトの基本設計段階でスタートダッシュをかけることができた」と語る(写真1)。