三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険などを傘下に置くMS&ADインシュアランスグループホールディングスが総工数約6万人月、約3年を投じて開発したのが、グループの共同利用システム「ユニティ」だ。会社合併を伴わないシステム統合という、先例のないプロジェクトを完遂。この経験をITガバナンスの強化につなげた。事業再編に伴い、2015年5月に終了したシステム改修では、本番環境での「障害ゼロ」を達成した。
 本特集では第1回でユニティ開発の詳細、第2回でユニティ開発後に取り組んだITガバナンスの強化、第3回で障害ゼロを達成した事業再編に伴うシステム改修について解説する。

 三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険などを抱える持ち株会社のMS&ADインシュアランスグループホールディングス(MS&ADホールディングス)。2014年度における損害保険の保険料収入は約2兆9000億円で、「3メガ損保」と呼ばれる国内3大損害保険グループの一角を占める。

 同社は2014年2月にグループの共同利用システム「ユニティ」を全面稼働した(図1)。ユニティは三井住友海上やあいおいニッセイ同和を含め、グループ全体で利用するシステムだ。開発総工数は約6万1000人月、ピーク時には約3000人の技術者が関わった。本体開発における総プログラム数は新規で約3万2000本、改修で約1万6000本に及ぶ。

図1●グループの共同利用システム「ユニティ」の概要
図1●グループの共同利用システム「ユニティ」の概要
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写真1●MS&ADホールディングス 総合企画部 IT企画室の中村尚史次長
写真1●MS&ADホールディングス 総合企画部 IT企画室の中村尚史次長
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 ユニティの開発には、約3年と数百億円を投じた。MS&ADホールディングス 総合企画部 IT企画室の中村尚史次長は、「この規模のプロジェクトは過去に全く経験がなかった」と振り返る(写真1)。

 開発のきっかけは2010年4月の経営統合である。三井住友海上グループ、あいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険の3社が経営統合し、MS&ADホールディングスが誕生した。2010年10月にはあいおいとニッセイ同和が合併し、三井住友海上と併存する形となった。

 三井住友海上とあいおいニッセイ同和は、損害保険会社として類似した業務を進めている。業務システムを一つにまとめたほうが、開発費や保守・運用費を削減できる。これがユニティ開発の狙いだった。ただ、本格稼働に至るまでに数々の困難が立ちはだかった。