一般のテレビニュースにもIoTという言葉が氾濫するようになった。以前からこの世界の発展を願い、自分でもIoT電子工作にいそしんでいる私としてはさまざまなプラットフォームが増えていくのに心躍らせている(関連記事:1000円以下で自作できるモバイル対応IoTシステム!なんとアプリ制作時間は15分)。今回はパソコンやモバイル機器でのデジタルテレビ視聴環境で知られるピクセラが日本ではまだ珍しい「Z-Wave」という920MHz帯の電波を活用したスマートホームプラットフォームを拡充させているので、実際にどんな使い勝手になるのか、試してみた。

920MHz帯でセンサー情報を送り、AWSで世界中から利用可能

 ピクセラがサービスを拡充させている家庭向けスマートホームサービス「Conte(コンテ)」はさまざまな場所に置いたセンサー、カメラなどの情報を無線で宅内に置いた「センサーゲートウェイ」に送り、その情報をピクセラが用意したクラウドのIoTサーバーに送信、ユーザーはその情報をさまざまなサービス事業者が用意したサーバー経由でリアルタイムに受け取れ、それに基づいた操作指令を送れる、というものだ。

 サービスの特徴はセンサーからの情報を920MHz帯の電波を使ってセンサーゲートウェイに送信、情報はアマゾンのWebサービス(AWS)に送り込んで運用する。実際に機器が使うのは922M~926MHzの通信周波数だ。ユーザーが直接触る端末にはiPhoneやAndroidのモバイルアプリを用意して、センサー機器、ゲートウェイ装置などの設定や管理、そして情報の取得を分かりやすくする工夫を加えた、というところだ(図1、2)。

図1●モバイル端末でセンサーの状態を一括表示
図1●モバイル端末でセンサーの状態を一括表示
「AWS Summit Tokyo 2016」で展示されていたConte ホームサービスの実働画面。温度・湿度・照度・人の動作・センサーの振動、紫外線光の状態などが一覧表示できる。設置がとても簡単なのがいい。
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図2●自宅のリビングに設置してみた
図2●自宅のリビングに設置してみた
右側がセンター的な役割を果たすセンサーゲートウェイ、左側が温度・湿度・照度・UV・振動・モーションの6種類を検出できる「マルチセンサー」。マルチセンサーは実際にはゲートウェイ装置とは別のチェックしたい場所に置く。
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 なぜ、920MHz帯の電波を使うのがそんなに特徴と言えるのだろうか? 通常、IoT機器からゲートウエイ装置に情報を伝えるためには2.4GHz帯のWi-FiやBluetoothを使うのが一般的だ。この2.4GHz帯の電波というのが最近ではなかなか厄介だ。都心でスマホのWi-Fi接続画面を見ると、こんなにWi-Fiアクセスポイントがあるのか! と驚く。また、Bluetoothもこの周波数帯を使う。さらに厄介なのは、電子レンジなどの調理器具だ。これらの機器は2.4GHzあたりの電波をまさに巨大なノイズとしてまき散らす。したがって、この周波数帯はとても混雑しており、場合によっては、正確な通信が阻害されてしまうのだ。

 Wi-Fiの場合はこの混雑を避け、まだ利用者が少ない5GHz帯を使う機器も多くなったが、こちらはまだモジュールの価格が高いということもあり、IoTセンサーの通信手段としては使われていない。しかも、日本では5GHz帯の屋外での利用が禁止されていることから、屋外環境に置くことが考えられるIoTセンサーには採用しづらい。

 900MHz帯の電波は日本では2008年5月に950MHz帯の利用が認可されたあと、さらに周波数再編を経て2012年7月から920MHz帯が利用できるようになった。この周波数帯はGHz帯に比べ、障害物に対する透過性が良いことや、回り込み性が高いことなどからIoTセンサーの足回りとして使うのに適している。屋内のどこにおいても、比較的安定した通信が簡単に確保できるのが大きな利点だ。