身の回りの仕事をデスクトップPCはもちろん、iOSデバイス、Webに展開できるアプリケーション作成ツール「FileMaker」。Excelで自動集計させられるくらいの力量の持ち主なら、FileMakerでデータの入力画面や伝票形式に整理された帳票画面などを持つ「専用」アプリも短時間で作成できる。

 そうは言っても第一歩が踏み出せないものだ。最近は販売元のファイルメーカー自身が入門書を発行したり、全国各地でハンズオンセミナーを開いており、勉強しやすくなって、門戸が広がってきた。今回は、実際にアプリを開発し、サーバー経由で配布して検証するハンズオンセミナーに参加した。その内容を報告しよう。

その日のうちに地図付き営業支援ツールが作れるように

 FileMakerは本来はデータベースアプリケーションに分類されるが、データ入力をするためのテキストフィールドや操作ボタン、データ検索や並べ替えをするさまざまな部品を自由に配置させるレイアウトエディターや業務プロセスを自動化するスクリプト言語などを備えたソフト開発プラットフォームの側面も大きい。アプリはiOSデバイスを通じてモバイル環境でも使えるものになる。マルチプラットフォームなアプリケーション作成ツールと言っても良い。ネットワークを通じて情報を共有させる機能が充実しているため、関係者全員で手分けして顧客を管理して営業をかける、といった用途のアプリケーションが短期間に作成できる。

 2016年6月30日、大規模家電量販店のヤマダ電機が無料の「iPadとFileMakerを利用した業務システム作成体験セミナー」を開くというので、ユーザーとして参加してみた。開催場所は東京駅・八重洲口正面に昨年10月オープンしたばかりの「Concept LABI TOKYO」。このお店、「最先端コンセプトの情報発信基地」を標榜して、地下1階から10階までの各フロアに最先端の商品やソリューションを提示する「ステージ」を設けるなどユニークな試みに挑んでいる。特に企業・法人・官公庁専用窓口を設置して案件に応える体制を整えている、としている(図1)。

図1●ヤマダ電機の1階フロアに設置されたFileMakerコーナー
図1●ヤマダ電機の1階フロアに設置されたFileMakerコーナー
導入検討をしている法人ユーザーなどが相談しやすいようにと、一番目につく1階の最前列にFileMakerコーナーがしつらえられている。
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 会場に入ると、席には一人一台MacBookとiPadが用意されており、受講者は手ぶらで参加できる。MacBookにはFileMaker Pro 15、iPadにはFileMaker Go 15がインストールされている。Mac上でカスタムアプリを作り、でき上がったアプリをFileMaker Serverにアップロード、そこから配信されたアプリをiPad上で操作して、その動作を確認するという「アプリ作成実体験」セミナーだ(図2)。

図2●会場風景。iPadとMacBookが一人に1台ずつ
図2●会場風景。iPadとMacBookが一人に1台ずつ
セミナー会場には参加者一人一人が占有できるiPadとMacBookが1台ずつ配備されている。これを使って、実際に自分でアプリを作る。
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 午後1時半にスタートして約2時間半で完成、実際にサーバーから配信される「自作」のアプリケーションを使ってみるという体験はなかなかスリリングで衝撃的だ。でき上がるアプリは5000件の顧客データを収録した、簡易顧客管理カスタムアプリケーションだ。顧客の情報を元に、打ち合わせスケジュール、連絡メモ、住所を元に地図を表示させるなど、さまざまな機能を盛り込んだ営業支援ツールを作る。セミナー開始2時間半で、iPadから操作できる顧客管理カスタムアプリが動き始め、参加者は驚きを隠せない(図3)。

図3●アプリが見る見るうちにでき上がる
図3●アプリが見る見るうちにでき上がる
顧客管理アプリを1から作っていくが、あっという間にそれらしいものができ上がり、参加者からは驚きの声が
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