読者の皆さんの中でATOKの存在を知らない人はいないだろうが、日ごろiPhoneを愛用していてその流れでMacを使い始めた、という《新人類》にとってはなじみが少ない。特に新しいMacには大幅に改善された「日本語IM」が搭載され、通常の利用には何の苦痛も感じないユーザーが増えた。そんな中、文章作成支援機能に磨きが掛かった新版の「ATOK 2015 for Mac」が登場する。発売前のベータ版でその実力を検証してみよう。

整備されてきたMacの日本語入力環境

 MacのOS Xに標準装備されている日本語入力システムは「ことえり」と呼ばれるモジュールが長らく使われてきた。日本語かな漢字変換エンジンとしては、ごく基本的な機能しか持たないし、辞書が貧弱といったもの足りなさが目立ち、どうしてもサードパーティ製の日本語入力エンジンを導入したいニーズがあった。

 今回取り上げるATOK(http://atok.com)、Macの世界では古い運用実績があるEGBridgeを正統に継承した「かわせみ2」(物書堂 http://www.monokakido.jp)など有償システムに加え、Googleが開発した完全無償の「Google 日本語入力」(https://www.google.co.jp/ime/)など。これらを追加インストールすると、劇的にと言っていいほど日本語入力環境が向上し、快適になった。

 ところが、MacのOS Xの最新版10.10(Yosemite)には新装なった日本語入力プログラム「日本語IM」が搭載され、状況は変わった。新しい「日本語入力プログラム」では、タイプインした端から単語予測機能が働き、なかなか見事に日本語入力できる(図1)。

図1●Yosemiteに搭載の日本語IMはリアルタイムに予測変換してくれ、長文をタイプインしていくと、正しく入力されているかどうか確認できる。変換効率もなかなか良くなった。
図1●Yosemiteに搭載の日本語IMはリアルタイムに予測変換してくれ、長文をタイプインしていくと、正しく入力されているかどうか確認できる。変換効率もなかなか良くなった。
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 以前はなぜこんな言葉も知らないのか、と思わせる変換をしでかしていたが、今は辞書も充実してきて、通常のビジネス文書作成には全く問題なくなってきた。問題はそれ以上の要求、たとえば、医療や法曹用語などの専門用語を多用する場合には誤変換も多く発生する。さらに、法令文などで多用される難読語などを一気に辞書登録してしまいたい、といったときに、どうしても力不足を感じてしまうのだ。OS X標準の日本語プログラムには、誤変換を苦労して修正し終わった単語を、マウスで選択して即登録する、といった機能さえ用意されていないのだ。