「Pokémon GO」は、Ingressで作られた位置情報データベースの上に構築された別の「位置ゲー」
「Pokémon GO」は、Ingressで作られた位置情報データベースの上に構築された別の「位置ゲー」
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 2016年のモバイル関連の最大ニュースは、「Pokémon GO(ポケモンGO)」でしょうか。もっとも、あまりに大きすぎてもはやモバイル関連とはいえず、社会現象といってもいいかもしれません。しかし、筆者が問題にしたいのは、ポケモンGO自体ではなく位置情報ゲーム、いわゆる「位置ゲー」としてのポケモンGOの普及です。

 これまでのほとんどのゲームは、ゲーム専用機でも、パソコンでも、スマートフォンでも体験に多少の差はあれ、同じものを楽しむことができ、それを実行するプラットフォームとの関係は、あまり強くなく、どちらかというとプラットフォームごとの差違を感じさせないように作られました。もちろん、表示能力や処理性能には違いがあるため、ゲーム内容に影響が及ぶことはあります。ですが、同じタイトルを名乗る場合、どれでやっても同じゲームが体験できるように作るのが普通です。しかし、「位置ゲー」は、GPSを装備し、どこにいても通信が常に行えるスマートフォンというプラットフォームでしかできないゲームです。スマートフォンがあったからこそ作ることができたゲームです。

 これまで、スマートフォンは、それ以前から存在していたパソコンなどのプラットフォームで作られたゲームやアプリなどを「移植」するだけのプラットフォームでした。PCや携帯ゲーム専用機などの先行するプラットフォームから「お下がり」をもらっていた「お子様」状態だったのです。

 スマートフォンは「位置ゲー」でようやく、独自のジャンルを持つに至ったといえるでしょう。もちろん、独自のジャンルを持つだけなら、どんなプラットフォームにも独自のジャンルがありえます。位置ゲーに関していえば、ポケモンGOは、「Ingress(イングレス)」というゲームで作られたシステムをベースにしています。また、可搬形のGPS受信機を使って、緯度経度で示される位置に隠された「プレゼント」を捜すというゲームもスマートフォン登場前から行われていました。