ソフトバンクはどうしてARMを買収できたのか? そもそもどうして買収しようと考えたのか?
ソフトバンクはどうしてARMを買収できたのか? そもそもどうして買収しようと考えたのか?
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 7月にソフトバンクがARMを買収することが発表されました。IT業界ではおそらく今年一番のニュースとなるでしょう。さて、今回は、この買収について考えてみることにします。もっとも、すでに多くの記事でこの件を扱っていますが、中には「ARMって何」みたいなところから入っている記事もあります。少なくとも、本サイトや本連載をお読みいただいている読者の方はARMが何の会社で何を作っていて、どういうビジネスをしているのかについては基本的にご存じだと思われます。また、ソフトバンクについてもどんな会社で、会長の孫さんがどんな人なのかはご存じと思われますので、こうした説明は省きます。

 この買収で一番変化するのは、ソフトバンクよりもむしろARMのほうでしょう。買収にあたり、ARMは、期限付きながら、本社の所在地や現経営陣、従業員はそのままという約束を得ています。さらに今後5年間の間に、ソフトバンクの投資により、従業員数を増やすことも約束に入っています。

 しかし、一番の変化は、ARMが株式会社からソフトバンクの完全子会社になるという点です。一般に株式会社は、株式を売りそれで資金を調達します。しかし、株主は、会社に対して株価や配当といった自身の利益に対して動くのが一般的です。このため、ARMは、自身の活動について株主に納得してもらう必要があり、事業の利益率や売り上げに対する要求があり、おのずとお金の使い道や方向性なども制限されてきます。

 しかし、ソフトバンクの完全子会社になるということは、極端にいえば、孫さんさえOKを出せば、ARMは、株主を気にすることなくどんなこともでもできるようになるのです。特に技術系企業の場合、一般の株主に事業内容や方向性を理解してもらうのはかなり困難です。