インターネット系のコミュニケーションサービスを災害時にどのように利用するかについて、いくつか記事が出ています。なかには事実を誤認したり、問題を感じるものも少なくないと思います。そこで、災害時の通信について、技術的に考えてみることにします。

 ざっと見た感じ、以下のような論点の主張が多いように見受けられます。

(1) 安否確認は電話で行うべきではない。

(2) インターネット系のコミュニケーションサービスでも、電話回線に接続するものがあるのに、そうでない別のものであるかのように誤認されている。

(3) 電話回線につながるインターネット系のコミュニケーションサービスを利用して災害地に電話することは、現地での警察や消防などへの通報を阻害する可能性がある。

 筆者は、別にどこのかの特定のサービスを擁護するつもりはありません。技術的に見ることで、災害時の通信に対してどう対応すべきかを考えたいと思っています。そして、パケット系通信(後述)を使う、コミュニケーション技術は、災害時に役立つものだし、既存の固定電話などの能力不足をカバーできるものだと考えています。そして、今回のようなタイミングで、一方的な決めつけや誤った議論は、見過ごせるものではないと考えています。

 まず、安否確認ですが、これは「不要不急」の通話ではありません。必要があれば、電話してでも確認すべき事柄です。多くの通信事業者が災害掲示板などを推奨していますが、これは後述するように災害地では「災害時優先通信」が行われ、一般電話に対して通信制限がかかり、つながりにくくなるため、代替の方法として提供されているもので、事業者も安否確認の電話を「禁止」しているわけではありません。また、世の中には、電話でしか連絡が取れない人、災害掲示板などが利用困難な人もいます。そうした人がいる以上、安否確認に電話(音声通話)を使うことは、必要なら選択すべき方法の1つです。

 災害時に電話で家族などの安否を確認することは「不要不急の電話」ではありません。これについては、さまざまな意見もあるかもしれません。家族などを心配する気持ちは、そういう状態にならないと、分からないことかもしれません。この点に関しては、筆者は、電話でもなんでも使って安否確認をすべきだと思っています。ネットの議論に萎縮することなく、堂々と安否確認を行うべきです。この安否確認は必要なら電話を使ってでもすべき、という部分が以後の議論の前提になります。なので、この点について、違うご意見をお持ちの方は、ここから先を読む必要はありません。