写真1●経済産業省商務情報政策局の野口聡情報処理振興課長(撮影:井上 裕康)
写真1●経済産業省商務情報政策局の野口聡情報処理振興課長(撮影:井上 裕康)
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 「日本企業の収益力を強化するための取り組みである」。経済産業省商務情報政策局の野口聡情報処理振興課長(写真1)は、2015年5月26日に発表した「攻めのIT経営銘柄」を創設した理由についてこう言い切る。野口氏は日経BP社が2015年4月21日に開催した「日経ITイノベーターズ Executive Summit ZERO」で、「攻めのIT経営の推進について」と題して講演した。(日経ITイノベーターズ Executive Summit ZEROの概要については特集の目次を参照)

収益力の強化にIT活用は不可欠

 「日本の稼ぐ力、収益力を強化していくことが、今、経済産業省が進めている改革の一丁目一番地」と野口氏は強調する。野口氏は、日本企業の生産性が欧米企業と比較して低い点を指摘。「労働時間あたりGDP」が主な欧米諸国に比べて低いことや、米国とドイツに比べて企業のIT投資額が少ないことをを示した。

 IT投資の目的については、日米で違いがあることにも言及した。日本の場合、「ITによる業務効率化/コスト削減」などの「守りのIT投資」が目的の上位を占める。これに対し、米国については、「製品やサービス開発強化」「ビジネスモデル変革」など「攻めのIT投資」が上位を占めることを、調査データで示しながら説明した。さらに、米国の学術論文を引用し、「IT投資と企業収益に相関関係があり、その効果は守りのIT投資よりも攻めのIT投資のほうが有効である」(野口氏)と訴えた。

企業トップを動かすための「銘柄化」

 守りのIT投資から攻めのIT投資へ――。こうした発想の転換を日本企業に促すため、参考にしたのが「なでしこ銘柄」である。「2013年2月に、経産省と東京証券取引所が共同で、女性社員を積極的に登用している企業を銘柄化して公表した。これにより、多くの日本企業のトップが女性社員の登用に関心を持った。こうした効果を、『攻めのIT経営』にも応用しようと考えた」。野口氏はこう話す。