「情報技術(IT)を活用した経営革新に燃えるキーパーソンが一堂に介して議論する場は、とても刺激的」「異なる会社や業界の生々しい話が聞けて、視野が広がる」――。これは、日経BP社が2015年4月21日に開催したイベント「日経ITイノベーターズ Executive Summit ZERO」の参加者の感想である。同イベントには、著名企業のCIO(最高情報責任者)やシステム部長、CMO(最高マーケティング責任者)、データサイエンティスト、経営企画部門長、デジタル戦略部長など、ITを駆使して改革を推進するリーダーが約60人集結した。

写真1●セコムの元会長で、益子昌平塾 塾長の木村昌平氏(撮影:井上 裕康)
写真1●セコムの元会長で、益子昌平塾 塾長の木村昌平氏(撮影:井上 裕康)
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 ITで企業変革を進め、成長を続けている代表的な日本企業といえばセコム。そのセコムでCIO、社長、会長を歴任した木村昌平氏(現・益子昌平塾 塾長)が「日経ITイノベーターズ Executive Summit ZERO」に登壇(写真1)。「ITイノベーターが日本を変える」と題してスピーチした。その内容に感銘を受けた参加者が、「ITイノベーターの使命」についてディスカッションした。まずは木村氏の講演内容から紹介しよう。

 「人を動かすには、肩書きなしの人間力で魂を揺さぶらねばならない。そして自己の最善を他者に尽くしきることが大切である」――。木村氏は自身のリーダーシップ論やIT進化の本質などについて語り、聴講者の共感を呼んだ。(日経ITイノベーターズ Executive Summit ZEROの概要については特集の目次を参照)

命令で人を動かすと、その人の潜在能力を殺す

 ITを駆使して企業変革をけん引するITイノベーターにとって、「リーダーシップは必須の素養である」と木村氏は述べた。その上で木村氏は、「人を動かして事を成し遂げること」とリーダーシップを定義した。では、どうやれば人を動かせるのだろうか。「人を動かすということは心を動かすこと、魂を揺さぶること。ただし人は命令では動かない。命令で人を動かすと、その人の潜在能力を殺す」。木村氏はこう言い切る。