第1回、第2回で分析したように、多くのIT部門ではインシデント管理や問題管理など、「サービスオペレーション(以下、SO)」のITILプロセスを中心に整備されていることがわかった。また、第3回、第4回で説明したように、これらのITILプロセスは、ランブック技術などを利用して自動化していく方向にある。

 デジタルビジネス時代におけるサービスは、スピードと事業貢献が求められる。この実現には、ライフサイクル全般にわたるITサービスマネジメント(ITIL 2011)の活動が不可欠だ。デジタルビジネス時代のIT部門としてどのようなプロセスを強化していくべきか、各ライフサイクル段階で注目すべきITILプロセスを考察する。

 まずは、サービスストラテジ(以下、SS)だ。サービスの計画立案から市場投入までの期間が短くなってきているため、サービスによる価値提供の基準を決めて、それを満たすかどうかで成功、失敗を迅速に判断できるようにする活動が必要になっている。このような要件に対応するために注目するべきSSのプロセスとして「サービス・ポートフォリオ管理」を挙げる。

 サービス・ポートフォリオ管理は、独立したプロセスとして活動することは少ないが、要は自社の提供サービスを「生まれてから墓場まで」、出来・不出来を判断しながら管理するプロセスである。どの組織も何らかの形で実施しているプロセスだろう。ITIL 2011のサービス・ポートフォリオ管理を正しく理解することで、次のような取り組みを促進できる。

・提供サービスのSWOT(強み、弱み、機会、脅威)の把握
・各種サービスのロードマップ策定
・サービス・カタログ管理および構成管理システムとの関係強化
・サービス統廃合の計画立案
・共通で利用可能な基盤技術/支援サービス/インフラの識別と最適化

 上記の取り組みにより、ビジネス部門が求めているサービスを迅速に投入することが可能となる。また、サービスを頻繁に更改、統廃合、廃止する新しいサービスの提供モデルにおいて効果的な対応が可能となる。