米アップルが2015年9月9日(現地時間)、米国サンフランシスコで開催した新製品発表イベントでは、毎年恒例の新型iPhone「iPhone 6s/6s Plus」の発表に加え、長らく噂になっていた12.9インチの大型版「iPad Pro」も発表されたことで、予想を上回る盛り上がりとなった(関連記事:Apple、iPhone 6s/6s PlusとiPad Proの発表イベントを開催! iPad Proは11月発売写真1)。

写真1●iPad Proを手にしたアップルCEO(最高経営責任者)のティム・クック氏
写真1●iPad Proを手にしたアップルCEO(最高経営責任者)のティム・クック氏
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 2010年の初代iPadの登場以降、タブレット市場の急拡大は一段落し、iPadも成長の鈍化が指摘されていた。その中で、アップルが打ち出してきた大型iPadの狙いはどこにあるのか。本記事ではiPad Proに関する発表内容を分析する。

iPad ProのライバルはSurfaceか

 最初に、iPad Proが登場した背景を振り返ってみたい。iPadは、スマートフォンやタブレットが従来型のPCを置き換えていく「ポストPC」時代を象徴するデバイスだった。PCは自由度が高い半面、複雑でサイバー攻撃に弱い一面もあった。これに対してスマートデバイスは、OSへのアクセスやアプリの流通を制限することで、誰にでも使いやすく安全なデバイスを目指したものといえる。

 だが、実際にはiPadだけであらゆる仕事をこなすことはできないのが現実だ。iPadのアプリはたしかに使いやすいが、機能的な制限は多く、入力インタフェースも限定的だった。iPadはビジネスシーンでも広く利用されているものの、その実態は情報を閲覧するビューアー用途が多数を占めていた。

 これに対して、タブレット型でありながらPCと同じOSを搭載したのがWindowsタブレットだ。その中でも特にiPadをライバル視してきたマイクロソフトの「Surface」シリーズは、Surface Pro 3で12インチの大型画面を採用。カバーを兼ねたキーボードやペンなど、iPad Proに先んじて次世代のタブレットの在り方を提案してきた。

 タブレットとして使ううえでは、確かにタブレットに特化したアプリが充実したiPadに軍配は上がる。だが本格的な仕事を想定すると、PCとの併用は避けられない。一方、Windowsはタブレット用アプリに乏しく、タブレットとしての魅力は低いが、PCのデスクトップアプリを使えるメリットがある。今後、Windowsでもタブレット用のアプリが増加していけば、Windowsタブレットの使い勝手がiPadを上回る可能性も見えてきていた。