米マイクロソフトは2015年7月8日(現地時間)、携帯電話事業に関するリストラを発表した。同事業における最大7800人の人員削減と、ノキアの資産に関する76億ドルの減損損失を計上することを明らかにした(関連記事:Microsoft、携帯電話部門を中心に最大7800人を削減へ)。

 ノキアの携帯電話事業を買収し、Windows Phoneの本格普及を狙ったマイクロソフトだが、大きな方向転換をすることになった。これまでの経緯を振り返りながら、今後の展開を分析する。

2013年にノキアの端末事業を買収した背景

 そもそもマイクロソフトは、なぜノキアの携帯電話事業を買収するに至ったのか。ノキアがスマートフォンのプラットフォームとしてWindows Phone OSを採用したのは、2011年に遡る。

 当時、既に米アップルがiPhoneで、韓国サムスン電子がAndroidでスマートフォン市場を席巻しつつあった。ノキアは、フィーチャーフォン市場で圧倒的な地位を築いていたが、スマートフォンでは遅れを取っていた。

 そこでノキアは、元マイクロソフト幹部のステファン・エロップ氏をCEO(最高経営責任者)として迎え入れた。Symbian OSに代わる新しいスマートフォンOSとして、勢いのあったAndroidや同社が開発を進めてきた「MeeGo」といった選択肢を排除し、Windows Phoneの採用に踏み切った。

 その後ノキアはWindows Phone端末「Lumia」シリーズを投入。しかし、Windows Phoneのシェアは2~3%台と低迷し、現在もその水準にとどまっている。株価の下落により企業価値の低迷に苦しむ同社は、確実な収益が見込めるAndroidに移行するタイミングを図っていた。

 一方、マイクロソフトにとってノキアは、Windows Phone戦略において欠かせないプレーヤーだった。ノキア以外にWindows Phoneに積極的なメーカーはなく、端末の9割はノキア製だったからだ。ここでノキアが脱落すれば、マイクロソフトのモバイル戦略は大きく頓挫することが予想された(写真1)。

写真1●Windows Phone 8では端末メーカー4社を発表したが、市場に流通する端末のほとんどはノキア製だった
写真1●Windows Phone 8では端末メーカー4社を発表したが、市場に流通する端末のほとんどはノキア製だった
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