「ITproの読者が連休の間に読める、肩の凝らないコラムを書いてほしい」。編集部からこう頼まれたにもかかわらず、水爆の開発プロジェクトや戦艦大和の沈没を持ち出すのはどうかと思うものの色々考えているうちにこうなってしまった。

 編集部からは「普段ITproにあまり出てこない話題が良い」とも言われた。そこで「ITpro読者が黄金週間に読むべき10冊」といった読書案内を書こうと決めた。だが本を選ぶとなるとなかなか難しい。

 日経コンピュータの書籍紹介欄を数年担当し、情報システム責任者の参考になると思われる本について短文を書いてきた。その中から10冊選ぼうとしたが、それらの短文はITproに転載済みであり繰り返しになってしまう。

 ITのことはとりあえず無視し、手近にある本を紹介してはどうか。手近にある本とは最近読んで感銘を受けた本あるいは時々読み返している本である。「普段ITproにあまり出てこない話題」を取り上げることになるがITは一切出てこない。さすがにそれではまずいだろう。

 締切を数日過ぎた頃、ひらめいた。日経コンピュータで取り上げた本の中で最も印象に残った1冊を選び、それに関連させて手近の本数冊を紹介する。手近の本にITは「一切出てこない」もののITに関連付けて読んでいるので、その関連について書けば読み物として成立するのではないか。

 以上の考えで本稿を書いてみた。日経コンピュータに掲載した1冊、手近の6冊、合計7冊を紹介する。独断と偏見に基づくITとの関連付けはともかく、引用文を読み、興味を引かれた本がもしあれば黄金週間の合間にぜひ読んでいただければと思う。

水爆とコンピュータは同時に発明された

 「人間の発明品のうち、最も破壊的なものと最も建設的なものがまったく同時に登場したのは偶然ではなかった」

 最も破壊的なものとは水素爆弾、最も建設的なものとはコンピュータをそれぞれ指す。両者が同時に登場する経緯を描いた『チューリングの大聖堂 コンピュータの創造とデジタル世界の到来』(ジョージ・ダイソン著、吉田三知世訳、早川書房)の「まえがき」にこう書かれていた(日経コンピュータに掲載した紹介文はこちら)。