本連載では屋内高精度測位の様々な要素技術に触れてきた。[2]のインテックは「GPS(全地球測位システム)」「音波ビーコン」「BLE(Bluetooth Low Energy)ビーコン/iBeacon」を組み合わせている。[3]のゼンリンデータコムはGPSと、加速度・ジャイロ・気圧センサーを使った「PDR(歩行者自律航法)」を組み合わせている。

 他に要素技術として重要なものに「地磁気測位」がある。多くのスマートフォンが標準で搭載している電子コンパス(方位磁針)を使って、位置によって微妙に異なる磁気を捉えて測位精度を向上させる。ビーコン発信機などの外部機器を設置・運用することなく、ビル内や地下街でも使えるため、屋内高精度測位の用途で有力視される技術だ(関連記事:屋内でも誤差2mで位置情報把握、NRIが「地磁気測位」の実験結果を発表)。

地磁気測位を活用し、位置を自動学習

 本連載の[1]で紹介した国土交通省の実証実験に参加した15社の中で、この地磁気測位を重視した実験を行ったのが、半導体メーカー英CSRの日本法人シーエスアールである。

 CSRの測位技術「SiRFusion」は、GPSや無線LAN(Wi-Fi)による測位に加えて、地磁気測位を組み合わせているのが特徴だ。スマートフォンを持って歩くことで、その場にある無線LANアクセスポイントのデータを収集。地磁気の状態も組み合わせて、アクセスポイントの位置情報データベースを自動的に構築する。データが増えれば増えるほど「自動学習」が進み、精度が向上する。

 東京駅に直結している八重洲地下街での実験では、良好な測位結果が得られた。実際の歩行軌跡とSiRFusionの測位結果の誤差は最大6メートル程度に収まったという。無線LANアクセスポイントが随所に設置されているうえに、地磁気測位がうまく機能したのが要因だ(写真1)。

写真1●英CSRの日本法人シーエスアールが八重洲地下街で実施した屋内高精度測位実証実験の結果。実際の歩行経路と測位結果のずれが小さい
写真1●英CSRの日本法人シーエスアールが八重洲地下街で実施した屋内高精度測位実証実験の結果。実際の歩行経路と測位結果のずれが小さい
(出典:国土交通省高精度測位社会プロジェクト実証実験合同報告会発表資料 http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk1_000071.html)
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