「地下街の食品店に設置されたネズミよけのスピーカーが、音波ビーコンの受信を妨害した」。

 「実験エリア内で基礎データを計測するのに5人がかりで丸1日かかった。現地は人通りが多く、人がいないタイミングを見計らうのが大変だった」。

 「地下街の一部になぜか磁場がひずむ場所があり、地磁気測位の精度が落ちた」。

写真1●国土交通省主催の「高精度測位社会実現に向けた実証実験報告会」の様子
写真1●国土交通省主催の「高精度測位社会実現に向けた実証実験報告会」の様子
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 2015年2月20日、東京都内で開催された「高精度測位社会実現に向けた実証実験報告会」では、上のような様々な気づきを基に、活発な意見交換がなされた。

 主催は国土交通省国土政策局。日立製作所やリコー、インテック、大日本印刷、国際航業など15のIT・地図情報関連の企業・団体が一堂に会した。それぞれが、東京駅周辺の地下街・屋内で位置情報サービスの実証実験を行った結果を発表した(写真1)。

 この国交省のプロジェクトは、東京駅の主に丸の内側(西側)の地上・地下を舞台に、歩行者向けナビゲーションの精度を競うものだ。国交省は、無償で参加する事業者を公募。これに応じた15社・団体が2015年1月19日から30日にかけてそれぞれ実証実験を実施した。2月20日の会合は、その成果の報告会だった。

駅やビルの管理者を巻き込み、丸の内で実証実験

写真2●東京駅周辺における高精度測位実証実験の実施エリア
写真2●東京駅周辺における高精度測位実証実験の実施エリア
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 国交省は、15社が共通して使える実験環境を用意した。まず、駅空間を管理する東日本旅客鉄道(JR東日本)・東海旅客鉄道(JR東海)・東京地下鉄(東京メトロ)の3社や、ビル・地下街を管理する三菱地所などの協力を取り付けた。

 そのうえで同省は、対象エリア内で実証実験用にBLE(Bluetooth Low Energy)ビーコン/iBeacon発信機を約70個設置した(写真2)。公衆無線LAN事業者や飲食店などが設置している無線LAN(Wi-Fi)アクセスポイントが発する電波を使ったり、各社がBLEビーコン発信機や非可聴音(音波ビーコン)発信機を手持ちで補完的に使ったりすることも認めた。