米オークリッジ国立研究所は2015年4月15日、次世代スーパーコンピュータ「Summit」の導入計画を明らかにした(写真1)。2017年までに導入し、2018年から運用を始める。
Summitは、米IBMの次世代CPU「POWER9」と、米エヌビディアの次々世代GPU「Volta」で構成するスパコンだ。ピーク性能は150~300ペタFLOPSで、同研究所が現在運用している世界ランク2位のスパコン「Titan」の5~10倍、理化学研究所が運用する世界ランク4位のスパコン「京」の10~20倍に当たる。
オークリッジ国立研究所はSummitを、気候変動シミュレーションなど従来の用途に加え、核融合炉の設計に活用する計画だ(写真2)。
この最新鋭スパコンは、米IBMが5年にわたって研究を続けてきた次世代のコンピュータ・アーキテクチャー「データ・セントリック・システム」の最初の成果だという。
データ移動を最小化するアーキテクチャー
データ・セントリック・システムとは何か。IBMリサーチ部門 データ・セントリック・システム担当副社長のマイケル・ローゼンフィールド氏は、「データの移動を最小限にし、データの近傍で演算する設計のこと」と表現する(写真3)。
現在のコンピュータは、"データの演算"よりも、例えばストレージからメモリー、メモリーからプロセッサへとデータを転送する"データの移動"に時間や電力を多くの消費しており、システム全体の性能を高める上で最大のボトルネックになっている。
このため、データの移動をできるだけ少なくするようハードウエアを設計することが、システム全体の高速化や省電力化に直結するようになった。
Summitのアーキテクチャーも、この「データの移動を少なくする」という設計思想に基づいている。システムの最小単位である計算ノード当たり、CPU2個、GPU4~6個を搭載する見込み。CPUとGPUは、PCI Expressの5~12倍の帯域を持つエヌビディアの高速バス「NVLink2.0」で接続する。これらのプロセッサが、512Gバイトを超えるDRAM、800Gバイトの不揮発メモリーを共有する。