データ分析でビジネスに貢献する「データエンジニア」を目指すこの連載も、この第8回をもってひとまず終了です。最終回となる今回は、ITで企業の業績を向上させる、いわゆる「攻めのIT」を取り上げます。

 攻めのITにおいて、データ分析の考えがいかに重要か、分析的な観点からどのようにシステムを設計するか、私が実際に関わった事例を基に紹介します。

同じO2Oアプリでも、成果が劇的に異なるのはなぜか

 「攻めのIT」の中にも色々な種類がありますが、ここでは筆者が実際に企画、推進したO2O(オンライン to オフライン)アプリを例にとってみましょう。O2Oアプリとは、スマートフォンアプリによるオンラインサービスを通じ、オフラインである店舗への集客を図るアプリのことです。

 図1は、とある業界のO2Oアプリのダウンロード数比較です。最終的な成果である売り上げ/利益効果については各社公表していないので、ここではダウンロード数での比較としています。

図1●筆者担当アプリのダウンロード数を100とした時の、担当アプリのリリースから1年前~半年後以内にリリースされた競合アプリのダウンロード数
図1●筆者担当アプリのダウンロード数を100とした時の、担当アプリのリリースから1年前~半年後以内にリリースされた競合アプリのダウンロード数
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 手前味噌ではありますが、ご覧のとおり、ダウンロード数では筆者の携わったO2Oアプリがダントツの実績をあげています。ダウンロード数が多いのは、もともとの店舗数が多いからでは?と思われるかもしれませんので、1店舗あたりのダウンロード数に補正したのが図2です。

図2●筆者担当アプリの1店舗当たりダウンロード数を100とした時の、競合アプリの1店舗当たりダウンロード数
図2●筆者担当アプリの1店舗当たりダウンロード数を100とした時の、競合アプリの1店舗当たりダウンロード数
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 やはり、1店舗当たりのダウンロード数もダントツです。なぜ、同じO2Oアプリなのにここまで差が付いたのでしょうか?筆者が考える理由は、以下の四つです。

1. アプリのビジネスモデルに基づいてKPI(重要業績指標)を適切に定義し、それぞれのKPIに対しマーケティング視点から必要な機能を定義したこと

2. マーケティング視点で定義された要件をITの言葉に適切に翻訳したこと(つまりは要件定義)

3. KPI、並びにそれらを因数分解した指標を「全て取得」できるようにしたこと

4. 取得した指標を活用し、高速にPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回したこと

 それぞれ、順に説明しましょう。