第1回では、スマートフォンがPCを超えるインターネット利用手段になりつつあることを示し、デジタルマーケティングに新しい変化が起こることを述べた。具体的には以下の2点である(詳しくは第1回記事を参照)。

  1. スマートフォンが注目・興味を喚起できるメディアになったことで、「見込み顧客化」(プレセールス)を目的とした活動の幅が増えた
  2. スマートフォンにより、一度接触した顧客の「再購買プロセス」における興味・関心にも関与できるようになり、顧客維持・LTV(顧客生涯価値)向上(ポストセールス)を目的とした活動の幅が増えた

 今回は、前者の「見込み顧客化」(プレセールス)を解説する。ビービットのコンサルティング事例を基に、スマートフォンユーザーの特徴とスマートフォン対応における注意点を整理しよう。

保険商品は、不安を抱えて選ぶもの

 まず、ある大手保険会社の事例を紹介する。健康に関する不安、または結婚・出産などのライフイベントなど、民間保険への加入を検討するきっかけは身近に存在する。しかし、多くの人にとって保険について学習した経験や保険会社との接点を持つ機会は意外に少ない。

 そのため、ユーザーは資料請求や店舗訪問など具体的なアクションを起こす前に、保険そのものや商品情報、口コミなどの情報収集に比較的時間をかける傾向にある。知らないうちに不要な商品を契約することは避けたいという不安があり、ある程度勉強してから検討したいと思っているからだ。

 一方、保険会社は、営業スタッフとの対面機会があればベストだと感じている。潜在顧客の家族構成や家庭状況、心配や悩み、検討時のポイントなどを具体的に聞き出すことができるので、説明を通じて理解度を確かめながら契約につなげる、従来型のノウハウをそのまま生かせるからだ。

 ところが、ユーザーがインターネット上で検討プロセスを進めてしまうと、保険会社はリーチできないどころか潜在顧客のニーズすらつかめず、結果の数値でしか判断できなくなってしまう。ほかの年代に比べて特にネット利用が多い若年層について、保険会社はリーチ不足を課題に感じていた。

 そこで保険会社とビービットは、顧客動向をつかむためにプロジェクトを実施した。環境の変化を踏まえて、潜在顧客の商品検討における行動と心理変化がどうなっているのか、また保険商品の検討過程でブランドや商品がどう認知されているか、このあたりを把握することが目的だった。