世の中では、相変わらずビッグデータやアナリティクスに関するセミナーが真っ盛りである。概念的なものから手法や演習に至るまで、様々なレベルでこれだけ多くのセミナーが開催されているということは、それだけのニーズがあるということだろう。

 今回取り上げる『データサイエンティストに学ぶ「分析力」』(原題は、「Sexy Little Numbers」)は、大手広告代理店の数理マーケティング部門長であるディミトリ・メークス氏によるマーケティングに対する計量的アプローチの入門解説書である。著者は、大学で計量経済学を専攻して、学生時代から大手広告代理店で数理マーケティングを20年以上経験してきたという、まさに打って付けの経歴で、多くの事例や具体的なデータ提供業者の名前もあり、概念から分析を経て行動へとの流れを意識した、実務家向けの良書といえる。

 ただ、残念なことに翻訳には少々難があり、英語が苦にならない人は原文で読まれることをおすすめする。英語版にも数字の誤りがある(後述)が、英語も易しいうえ、電子書籍版は安価である。

写真●『データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」』
写真●『データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」』
(ディミトリ・マークス、ポール・ブラウン著、小林啓倫 訳)