携帯電話ネットワークを活用して自律飛行型ドローンを実現するべく、KDDIが推し進めている「スマートドローン構想」。構想発表から約1年が経過し、新たにウェザーニュースが参画したほか、KDDIの基地局を活用したドローンインフラ整備に向けた取り組みを進めるなど着実に実績を積み上げているようだ。だが、事業化のハードルを越えられるのだろうか。

実証実験は着実に進展

 KDDIは2016年12月、産業用ドローンを開発するプロドローンや、地図を手掛けるゼンリンなどと共同で、LTEネットワークを活用して自律飛行型ドローンを運用する基盤を構築する「スマートドローン構想」を発表した。それから約1年が経過した11月29日に同社は発表会を開き、スマートドローン構想の進捗を示すとともに、新たな取り組みを打ち出した。

 KDDIの新しい取り組みの狙いを理解するため、改めて同社がなぜスマートドローンを手掛けるに至ったのかを振り返ってみよう。

 ドローンにはカメラや様々なセンサーが搭載されており、単体での自律飛行が実現できないわけではない。だが地形条件や他のドローンの飛行状況の把握など、様々な条件を満たしたうえで安全に長距離飛行するには、地図情報や運行管理が必要だ。そこでKDDIは他社との連携によりスマートドローンのプラットフォームを開発し、それをビジネスへとつなげようとしているのだ。

 スマートドローンプラットフォームの開発に当たって、KDDIは産業用ドローンを開発するプロドローンと、3D地図を作成するゼンリン、ドローン用の通信モジュールを提供するクアルコム、そしてドローンの運行管理システムを開発するテラドローンと提携。これら企業と協力してプラットフォームの開発を進めてきた。

KDDIはまず、クアルコム、ゼンリン、プロドローンに加え、ドローンの運行管理システムを提供するテラドローンとも提携し、ドローンプラットフォーム開発を推し進めてきた。写真は12月1日のKDDIスマートドローン構想事業説明会より(筆者撮影)
KDDIはまず、クアルコム、ゼンリン、プロドローンに加え、ドローンの運行管理システムを提供するテラドローンとも提携し、ドローンプラットフォーム開発を推し進めてきた。写真は12月1日のKDDIスマートドローン構想事業説明会より(筆者撮影)
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 そのプラットフォームを活用した実証実験として、2017年4月に新潟県長岡市山古志(旧・山古志村)で、日本で初めてLTEを活用したドローンの完全自律飛行を実施。5月には国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」におけるドローン警備の分野で、スマートドローンを活用した取り組みが採択されたという。

 そして10月にはドローンを活用した事業を展開したい事業者に向け、ソリューションパッケージの提供も開始しており、事業化への道筋もつけているとのこと。本格的なドローンの事業化に向けた取り組みを着実に進めている様子がうかがえる。