クラウド上にモバイル通信のコアネットワークを持ち、低価格で柔軟性のあるIoT向け通信サービスを提供するソラコム。同社はKDDIと共同でIoT向けの通信サービス「KDDI IoTコネクト Air」を開始すると発表した。両社の狙いと課題はどこにあるのだろうか。

IoT専用の低価格モバイル通信を提供するソラコム

 IoT分野で最近、注目されているベンチャー企業の1つにソラコムがある。同社はIoT向けの通信プラットフォーム「SORACOM」を提供する企業だが、最大の特徴は、携帯電話のコアネットワークを専用の機器を用いるのではなく、クラウドネットワーク上に構築することにより、低価格で柔軟性の高い通信サービスを実現したことにある。

写真1●ソラコム代表取締役社長の玉川憲氏(右)とCTOの安川健太氏(左)。ソラコムが展開する「SORACOM」のサービスは、既にいくつかのIoT関連機器に導入されている。写真は10月18日の「KDDI IoTコネクト Air」発表会より(筆者撮影)
写真1●ソラコム代表取締役社長の玉川憲氏(右)とCTOの安川健太氏(左)。ソラコムが展開する「SORACOM」のサービスは、既にいくつかのIoT関連機器に導入されている。写真は10月18日の「KDDI IoTコネクト Air」発表会より(筆者撮影)
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 ソラコムがNTTドコモのMVNOとして提供している通信サービス「SORACOM Air」の料金体系を見ると、基本料はデータ通信のみの場合1日5円から。通信料は時間帯と通信速度によって変化する。例えば通信速度の32kbpsの「s1.minimum」の場合、通常時間帯(午前6時から翌日の午前2時まで)であれば通信量1MB当たり上り0.2円、下り0.6円となる。深夜時間帯(午前2時から午前6時まで)の場合は上り0.2円、下り0.2円となる。通信速度は最大2Mbpsまでと低速だが、非常に安価で特徴的な料金体系となっていることが分かるだろう。

 IoT、さらに言うなら自動販売機やスマートメーターなどに用いられている機械間通信(M2M)においては、やり取りするデータは数値の一覧などシンプルな情報のみであることも多く、通信のタイミングも1日1回〜数回と、スマートフォンと比べれば圧倒的に少ない。そうしたことからSORACOM Airでは、それぞれの機器が都合のよいタイミングで、必要な量だけデータ通信ができるよう、ハードルの低い料金設定を設けているわけだ。

 しかもSORACOM Airは基本料が安く、導入のハードルが低いことから、IoTの事業を開始する際にも導入しやすい。ユーザーが自らWebサイト上で回線を一元管理し、必要に応じてプランを変更したり、回線の休止や再開をコントロールしたりできる。そうしたIoT向けに利用しやすい通信環境を実現したことから、ソラコムの注目度は急速に高まっており、2015年9月のサービス開始から、既に4000を超える顧客を獲得しているという。

 またソラコムは、2016年7月に未来創生ファンドからの出資を受け、同ファンドに出資しているトヨタ自動車とのパートナーシップを構築することも発表。トヨタとKDDIが推進する、コネクティッドカー向けグローバル通信プラットフォームに向け、SORACOMのサービス提供に向けた協議を進めるとしており、大手企業との提携によってサービスの利用を大きく拡大させようとしている。