スマートフォンがパソコンに近づくにつれ、重要性が高まってきているのがセキュリティをいかにして確保するかということ。スマートフォンのセキュリティは、特に「格安スマホ」の取り組みでさらに注目を集めるようになった、SIMフリーのAndroid端末は、自由度が高いだけにセキュリティ脅威にさらされやすいからだ。最近ではそうした端末に向け、無料でセキュリティアプリを提供する中国のセキュリティ企業が存在感を増している。

格安スマホの広まりで高まるセキュリティ脅威

 iPhone 3Gが日本で発売されてから8年が経過した。スマートフォンは飛躍的な進化を遂げ、今やパソコンのミドル/ローエンドモデルにも匹敵する性能を持つに至っている。またネットワークも、LTEの導入によって最大100Mビット/秒超の通信速度を実現。ひと昔前は固定回線でも手軽に利用するのが難しかった環境が、手のひらで実現するようになっているのだ。

 だがそうしたスマートフォンの進化は、プラスの側面だけでなくマイナスの側面も与えている。そうしたマイナスの側面の象徴といえるのが、セキュリティの問題だ。スマートフォンの普及で、パソコンに近いオープン性を備えた端末を多くの人が持つようになったのに加え、ハードやネットワークの進化によってパソコンと同等の攻撃ができるようになったことから、スマートフォンを狙ったサイバー攻撃の脅威が急増しているのである。

 実際、McAfee Labsが公開している2015年第2四半期における脅威レポートを見ると、モバイルマルウエアの合計は同四半期に800万件を超えているという(図1)。特に2015年に入ってからは急増する傾向にあり、前四半期と比べても17%増加しているとのことだ。

図1●モバイルマルウエアは、右肩上がりで増えていることが分かる(出典:McAfee Labs脅威レポート 2015年8月)
図1●モバイルマルウエアは、右肩上がりで増えていることが分かる(出典:McAfee Labs脅威レポート 2015年8月)
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 日本では現在のところ、多くのユーザーが携帯電話事業者(キャリア)経由でスマートフォンを購入している。アプリについても、App StoreやGoogle Playなど、公式のアプリマーケットをダウンロードすることが一般的だ。それゆえ従来は、Webやメールなどを経由した詐欺などのトラブルに遭うケースは多いものの、マルウエアの感染被害などは比較的少ないと見られていた。だが、MVNOのSIMと、SIMフリースマートフォンをセットで販売する“格安スマホ”の人気の高まりによって、セキュリティリスクが急速に高まる可能性が出てきている。

 大手キャリアの場合、何らかのセキュリティサービスを無料、もしくは安価で提供しているが、SIMフリー端末にそうしたアプリが最初から入っていることは稀であるし、セキュリティ系サービスを提供しているMVNOも多くはない。加えて、以前触れた「楽天アプリ市場」のように、非正規のアプリマーケットの利用が増えることが、結果的に別の部分でセキュリティ脅威を高めることにもなる。

 様々なサービスのコストをカットしているからこそ、格安スマホは安価に使えるともいえるのだが、その分知識がないユーザーが安易に利用すれば、セキュリティの脅威にさらされやすくなるのだ。