FREETELがエムティーアイ(MTI)の「music.jp」と連携して新サービスやキャンペーンを実施するなど、ここ最近MVNO(仮想移動体通信事業者)がコンテンツ販売を積極化する動きが見られるようになった。その背景には、国内のモバイルコンテンツ事業者とMVNO、それぞれの市場環境があるようだ。

MVNOがコンテンツ事業者との販売連携を拡大

 総務省の施策によって端末の実質0円販売が難しくなる一方、携帯電話の基本料が下がらず利用料が上がりつつあることから、低価格でスマートフォンを利用できるMVNOの人気が一層高まりつつあるようだ。MVNOは、ユーザー獲得に向け様々な施策を打ち出しているが、最近増えつつあるのがアプリやコンテンツサービスの販売連携である。

 そうしたMVNOの動向を象徴しているのが、「FREETEL」ブランドでスマートフォンや通信サービスなどを提供している、プラスワン・マーケティングの取り組みである。同社は2016年4月より、NTTドコモと「dTV」「dマガジン」「dヒッツ」の販売連携を実施しているが、6月にはさらに、エムティーアイの音楽サービス「music.jp」の販売連携を打ち出した(写真1)。

写真1●FREETELはエムティーアイと「music.jp」で販売協力を実施。FREETEL SIMのユーザーに対し、ポイントのプレゼントや特定コースの料金を2カ月間無料にするなどの特典を用意している。写真は6月27日のFREETEL発表会より(筆者撮影)
写真1●FREETELはエムティーアイと「music.jp」で販売協力を実施。FREETEL SIMのユーザーに対し、ポイントのプレゼントや特定コースの料金を2カ月間無料にするなどの特典を用意している。写真は6月27日のFREETEL発表会より(筆者撮影)
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 6月27日に開かれたFREETELの発表会によると、FREETELは「あなたのスマホ基本料 最大3年間0円キャンペーン」でmusic.jpとの連携を実施するとのこと。MVNOによる通信サービス「FREETEL SIM」を契約すると自動的に「music.jpの400コース for FREETEL 」に加入。月額400円の利用料が2カ月間無料になるほか、加入時に1000円相当のポイントもプレゼントされる。また同サービスを中途解約しない限り、FREETEL SIMのネット基本料(月額299円)も3年間無料になるという。music.jpのサービスに大きく踏み込んだ形で販売連携を実施しているのが分かる。

 こうした取り組みを見せているのはFREETELだけではない。先に上げたNTTドコモのコンテンツは、ビッグローブやインターネットイニシアティブ(IIJ)もMVNOとして販売連携を実施し、楽天モバイルはHuluやKKBOXなどと販売連携をしている。また。5月23日に販売開始した、録音された通話の内容をテキスト化するソースネクストの留守番電話サービス「スマート留守電」も、MVNOの楽天モバイルやイオンモバイル、ワイヤレスゲートなどが販売連携を実施。MVNOが積極的に外部のアプリやサービスの販売に取り組みつつあることが分かる。

 だが、シンプルな通信サービスを安価に提供することに注力してきたMVNOが、大手携帯電話事業者のようにコンテンツ販売を積極化しているのは、やや違和感を抱くところでもある。なぜ、MVNOとコンテンツ事業者が急接近しているのだろうか。