2015年6月20日から21日にかけて、東北各地でIngressのイベントが相次いで開催された。宮城県仙台市で開かれたIngressの公式イベント「Persepolis」には約4000人が訪れるなど大きな成果を残した。これらのイベントから、Ingressが地方の観光などに与える影響と、抱えている課題について探ってみたい。

東北各地でIngressの公式イベントが開催

 Ingressは、米グーグルの社内スタートアップである「ナイアンティック・ラボ」が提供しているゲーム(連載第1回を参照)。実際の位置を利用しており、異動しながら楽しむというゲームの特性が、社会人を主体に熱狂的なユーザーを生み出しており、最近では移動するエージェント(Ingressのプレーヤー)が与える影響力が強まったため、産業面でもIngressに対する注目が高まってきている。

 特に注目されているのが、「移動する」というゲーム性を生かした、観光を主体とした地方への送客である。既にいくつかの自治体がIngressを観光に活用する取り組みを進めている。中でも力を入れて取り組んでいるのが、東日本大震災で甚大な被害を受けた東北地方の自治体である。

 実際、日本で初めてIngressの公式イベントが実施されたのは、2014年5月に宮城県石巻市で開催された「Ingress Meetup in Ishinomaki」であるし、岩手県は「Ingress活用研究会」(現在は岩手県庁ゲームノミクス研究会)を立ち上げ、Ingress関連のイベントなどを実施している。

 そうした東北でのIngressに関する取り組みの活性化を受け、去る6月20日には宮城県仙台市で公式イベント「Persepolis XM Anomaly Primary:Tohoku Japan」が開催された(写真1)。

写真1●6月20日に開催されたIngressの公式イベント「Persepolis」が開催された仙台には、約4000人の参加者が集まった
写真1●6月20日に開催されたIngressの公式イベント「Persepolis」が開催された仙台には、約4000人の参加者が集まった
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 XM Anomalyとは、青の「レジスタンス」と緑の「エンライテンド」が、指定の時間までに特定のポータルを奪い合って点数を競う“団体戦”というべきイベント。今回のPersepolisでは、仙台のほかオランダや米国など他の国でも開催されており、世界各国で実施された結果の合計を競い合う、非常に大規模なものとなった。