「Apple Pay」の登場や、中国における「WeChat Pay」などの広まりによって、再び注目を高めつつあるモバイルペイメント。こうした新しいサービスが、「おサイフケータイ」など既存サービスの存在する日本に上陸することで、どのような影響を与えるのだろうか。
Apple Payを機にモバイルペイメントが再び脚光
今年に入って、仮想現実(VR)や人工知能(AI)など、古くて新しい概念がITの世界で大きな注目を集めている。その背景にはハードウエア性能の向上やネットワークの高速化など様々な要素の進化や環境変化がある。同様に環境の変化によって、再び注目を高めているのがモバイルペイメントの分野である。
日本ではモバイルペイメントの実用例として、FeliCaを用い、携帯電話やスマートフォンで電子マネーなどによる決済が可能な「おサイフケータイ」が知られている。世界的にも、これまでNFCを用いたモバイルペイメントを普及させようという動きは何度か起きている。ビザやマスターカードなどの金融事業者や、ベライゾン・ワイヤレスなどの携帯電話事業者、そしてグーグルをはじめとしたIT関連事業者など、様々な事業者がこの分野に取り組んでいるのだが、決して成功とは言えない状況が長く続いていた。
しかしながら2014年、米アップルがiPhone向けに、NFCを用いたモバイルペイメントサービス「Apple Pay」の提供を開始して以降、NFCを用いたモバイルペイメントが再び大きな注目を集めるようになった(写真1)。Apple Payは現在、米国のほかオーストラリア、カナダ、イギリス、中国でサービスを開始しており、利用できる国や地域を拡大しつつある。
さらにその翌年の2015年には、韓国サムスン電子が自社のスマートフォン向けに、やはりNFCを用いたモバイルペイメントサービス「Samsung Pay」を米国と韓国で開始。高いシェアを持つスマートフォンメーカーがけん引することで、モバイルペイメントの利用が急速に広がり、再び大きな注目を集めるようになった(写真2)。
なぜ、このタイミングでモバイルペイメントが成功しつつあるのかといえば、モバイルの分野で主導権を持つハードウエアメーカーがリーダーシップを持って市場開拓に取り組んだことが大きい。だがそれだけでなく、過去のモバイルペイメントの取り組みによって、米国などでは既にNFCに対応したPOSが広まっていた状況も、大きく影響したと見られている。AIやVRなどと同様、様々な条件が整い機が熟したことが、成功要因へとつながっているわけだ。