米アップルは6月13日(現地時間)、開発者向けイベント「WWDC16」を開催した。今年も様々な新発表があったWWDCだが、中でも注目されるのは、iOSの新バージョン「iOS 10」である。SiriのAPI公開や、メッセンジャーアプリの大幅なアップデートなど、様々な機能強化がなされたiOS 10からは、Androidを有する米グーグルだけではない、より多くのライバルを強く意識するようになったアップルの姿が見えてくる。

AI技術を積極的に活用したiOS 10

 今年もアップルの開発者向けイベント「WWDC」(Worldwide Developers Conference)が米国時間6月13日に開幕した。毎年、iOSをはじめとしたアップルが提供するOSの最新技術などが発表されることから大きな注目を集めている。今年もiPhone/iPad向けの「iOS」のほか、Apple Watch向けの「watchOS」、Apple TV向けの「tvOS」、そしてMac向けのOS X改め「macOS」に関する、新しい技術やサービスが発表された。

写真1●SiriのAPIが公開され、配車アプリの「Lyft」など、Siriでサードパーティーのアプリも利用できるようになった。写真は米アップルのプレスリリースより
写真1●SiriのAPIが公開され、配車アプリの「Lyft」など、Siriでサードパーティーのアプリも利用できるようになった。写真は米アップルのプレスリリースより
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 中でも高い関心を集めたのはiOSであろう。今回のWWDCでは、今秋の提供が予定されているiOSの次期バージョン「iOS 10」の新機能がいくつか紹介された。その機能は多岐にわたるのだが、特に注目されるのはAI(人工知能)を活用した機能であろう。

 大きな変化の1つが、SiriのAPIの公開である。アップルの自社開発アプリだけでなく、APIを用いて外部のアプリもSiriを活用できるようになった。基調講演では、Siriを用いてWeChatでメッセージを送ったり、Uberで配車をしたりするなどのデモが実施された。情報検索と内部アプリの利用に限られていたSiriの利用範囲が、大幅に広がっている様子が紹介されている(写真1)。

 またSiriだけでなく、現在のAIの要となっているディープラーニング(深層学習)を、他のアプリにも取り入れて使い勝手を向上させているようだ。例えばiOSの標準キーボード「QuickType」では、ディープラーニングを取り入れて前後の文脈を解釈し、より適切な入力候補を提示できるようになっている。またメッセージで予定が送られてきたとき、その内容から時間や場所、連絡先などを分析し、スケジュールを作成する機能なども、新たに搭載された。

 「写真」(Photos)アプリもディープラーニングによって強化された。写真の内容から人物や風景などを学び、それに応じて写真を抽出して検索しやすくしたり、自動的に場所やイベントごとに写真をまとめてアルバムにしたりする「メモリーズ」(Memories)という機能も新たに搭載。AIの活用は現在多くのIT企業が進めているが、アップルも同様に、AIに力を入れることでサービスの充実を図る狙いがあるようだ。