米グーグルがAndroid向けの仮想現実(VR)プラットフォーム「Daydream」を発表するなど、スマートフォンを活用したVRの取り組みが加速している。VRヘッドセットなどハード面での取り組みが急速に進む一方、スマートフォン性能の低さによるVR体験の質の悪さを懸念する声もある。スマートフォンによるVRは、VRの利用を広げる存在となり得るのだろうか。

グーグルがVRプラットフォームを発表

 今年に入って急速に注目が高まっている、ヘッドマウントディスプレー(HMD)を用いたVR。今年のCESやMobile World Congress(MWC)など、ITの見本市イベントでVRは非常に大きなテーマとなっていたことにみられるように、最近はVRに関する具体的な取り組みが急増している。一般ユーザーが体験できる機会が増えつつあることから、より注目度が高まりつつあるようだ。

 具体的な事例をいくつか挙げてみよう。2016年5月20日には韓国サムスン電子が、同社のスマートフォンを活用したエンターテインメントを楽しめる、期間限定の「Galaxy Studio」を東京・丸の内の商業施設内にオープン。同社のスマートフォンを用いてVRが楽しめるヘッドセット「Galaxy VR」を用い、VRによるジェットコースターやサーフィンを体験できるコーナーを用意し、一般ユーザーがVRを手軽に楽しめる環境を提供している(写真1)。

写真1●サムスン電子が期間限定で設置している「Galaxy Studio」では、Galaxy VRを用いて手軽にVRを体験できる環境を用意。写真は5月20日のGalaxy Studioオープンイベントより(筆者撮影)
写真1●サムスン電子が期間限定で設置している「Galaxy Studio」では、Galaxy VRを用いて手軽にVRを体験できる環境を用意。写真は5月20日のGalaxy Studioオープンイベントより(筆者撮影)
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 また4月には、バンダイナムコエンターテインメントが、VRの未体験領域を開拓する「Project i Can」を始動。それに伴い4月15日に、東京・お台場の商業施設に、専用のVR HMDを用いて様々なアトラクションを体験できる、体験型のアトラクション「VR ZONE Project i Can」を展開している。

 VR HMD自体まだ気軽に入手できるものではないが、VRの人気に伴い体験できる場が増えてきたことで、ゲームやITが好きな人達だけでなく、一般の人達からも注目を集めるようになり、VRの熱が急速に高まってきているのは事実だ。そうした中、VRに関して大きな発表を実施したのがグーグルである。

 グーグルは、米国時間の5月18日に実施した開発者向けイベント「Google I/O」で、Androidの新バージョン「Android N」に向け、VRを手軽に利用できる専用のプラットフォーム「Daydream」を提供すると発表している。グーグルはこれまでにも、段ボールなどを使って簡易型のVRが楽しめる「Cardboard」を提供してきたが、VRの盛り上がりに合わせる形で、Androidを活用したVR分野への本格参入を表明している。