スマートフォンの位置情報を活用したゲーム「Ingress」を運営する米ナイアンティックは、2016年4月15日から5月31日にかけて、東日本大震災で大きな被害を受けた福島・宮城・岩手各県の沿岸部への訪問を促す「Initio Tohoku Mission」を実施している。同社が東日本大震災の被災地支援イベントを継続的に実施する理由はどこにあるのか。福島県相馬市のミートアップイベントに訪れた同社CEOのジョン・ハンケ氏らに話を聞いた。

今年も東北で実施されたIngressのイベント

 米グーグルの社内スタートアップとしてスタートした、位置情報を活用するスマートフォンゲーム「Ingress」。そのIngressを開発・運営していたナイアンティック・ラボは、2015年にグーグルから独立して「ナイアンティック」へと名称を変更。さらに任天堂やフジテレビジョンなどから資金調達を受け、新たに「ポケットモンスター」のキャラクターや世界観を用いた位置情報ゲーム「Pokemon GO」を開発するなど、新しい取り組みを進めている。

 そのナイアンティックはIngress関連の様々なイベントを世界各地で実施。日本でも多くのイベントが開かれ、多くのIngressファンがイベントを訪れるなど、人気を博している。特徴的なのは、東北地方でイベントを頻繁に実施していることだ。

 実際同社は、ナイアンティック・ラボ時代の2014年5月に宮城県石巻市で「Ingress Meetup in Ishinomaki」を開催。これを皮切りとして、2015年6月20日には宮城県仙台市で「XM Anomaly」と呼ばれるIngressの公式戦イベント「Persepolis」を、翌21日には東北5県で「Mission Day」を開催している(「東北各地で開催されたイベントに見る、Ingressが観光に与える影響と課題」参照)。

 そして2016年の今年、同社は4月15日から5月31日にかけて、福島・宮城・岩手の3県にて「Initio Tohoku Mission」というイベントを実施している。このイベントは、Ingressのゲーム中で重要な役割を果たす「ポータル」になり得るものを、プレーヤーが探し歩いて、同社に申請するというルールで行われている。

写真1●「Initio Tohoku Mission」の開催を記念し、4月24日には各会場でミートアップイベントを実施。相馬市の会場にも多くの人が訪れ、イベントを楽しんでいた。写真は同イベントより(筆者撮影)
写真1●「Initio Tohoku Mission」の開催を記念し、4月24日には各会場でミートアップイベントを実施。相馬市の会場にも多くの人が訪れ、イベントを楽しんでいた。写真は同イベントより(筆者撮影)
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 ポータルとは、青(レジスタンス)と緑(エンライテンド)の陣営に分かれたプレーヤーが奪い合う“陣地”のようなもの。Ingressは現実の位置情報とリンクしたゲームであることから、現実に存在する建物やオブジェクトなどがポータルとして登録されている。ポータルの数が多ければ多いほど、プレーヤーがその地域を訪れる目的が増える。そうしたことから、東日本大震災で大きな被害を受けた東北3県の沿岸部への訪問者の増加を目的として、こうしたイベントの実施に至ったようだ。