手軽にスマートフォンとリアルな場所をつないだO2O(Online to Offline)施策を手軽に実現できる手段して、かつて大きな注目を集めた「ビーコン」。LPWA(Low Power Wide Area)など新しいIoT通信方式の台頭によって最近では存在感が薄れてしまっているが、近頃LINEがビーコンを活用したO2O施策を積極展開し、注目されている。なぜLINEはビーコンの積極活用に乗り出しているのだろうか。

IoTの登場がビーコンの広まりに影を落とす

 2013年にアップルがスマートフォン向けOS「iOS 7」を公開した際、大きく注目を集めた機能の1つに「iBeacon」があった。Bluetoothで特定の信号を発するビーコンを設置しておくと、iOSデバイス側がその信号を受信し、アプリなどを通じてスマートフォン上に様々なアクションを起こす機能である。

 iBeaconは、消費電力の少ないBluetooth Low Energyを活用し、シンプルな仕組みで実現されている。それゆえiBeacon対応のビーコンが低価格で、電池1つで長期間の運用ができメンテナンスの手間が少ないことでも注目されていた。

 iBeaconがもたらしたビーコンの概念はその後Androidにも広がり、2014年ごろにはBluetoothのビーコンを活用した取り組みが急速に広がっていった。中でもビーコンに熱い視線を向けていたのは、O2Oに力を入れる小売関連の事業者である。

2013〜2014年頃には、低コスト・低消費電力でスマートフォンと連携できるビーコンに対する関心が急速に高まり、多くのビーコンが登場した。写真は2014年5月28日のアプリックス主催イベントより(筆者撮影)
2013〜2014年頃には、低コスト・低消費電力でスマートフォンと連携できるビーコンに対する関心が急速に高まり、多くのビーコンが登場した。写真は2014年5月28日のアプリックス主催イベントより(筆者撮影)
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 なぜならビーコンを使えば、GPSが利用できない室内でもスマートフォンの位置を把握し、店舗とスマートフォンを直接連動させ、クーポンの提供やポイントの付与、決済などといったO2O施策が展開しやすくなるからだ。当時、スマートフォンを店舗の集客に活用するO2Oの取り組みは大きな注目を集めていただけに、小売事業者のビーコンに対する期待度は非常に高かったのである。

 だがそれから3年近くが経過した2017年、ビーコンは現在も法人向けなどで導入・活用されるケースがいくつか見られるものの、注目度は明らかに落ちている。その理由はいくつかあるが、最も大きな要因と言えるのが、IoTの概念が広まったことだろう。

 IoTによってモノ自体が直接通信するようになった。IoT向けに低価格かつ低消費電力でインターネット接続も可能なLPWAの各通信方式も、サービス提供に向けた動きが着実に進んでいる。それだけに、スマートフォンを経由しなければ通信できず、用途も限られるビーコンに対する注目度が下がっていったのは、ある意味仕方のないところでもある。