米マイクロソフトや米フェイスブック、LINEなどが、メッセンジャーアプリで動作する「チャットボット」を開発しやすくする仕組みやプラットフォームの提供を相次いで発表している。なぜ、チャットボットが急速に注目を集めるようになったのだろうか。
なぜチャットボットが注目されているのか
IT業界の動向をウォッチしていて、ここ最近急速に耳にする機会が増えたと感じる言葉の1つに、「ボット」(Bot)が挙げられる。
広義のボットはロボットの略称であり、人間に代わって自動的に処理をするプログラムのことを指す。検索エンジン用のデータを収集するクローラーや、Twitterで自動的につぶやいたり返信したりするキャラクターの「ボット」、そして「ボットネット」を構成するマルウエアの「ボット」なども、全て広義のボットの一種である。
だが現在話題となっているボットは、そうしたボットの中でも、メッセンジャーアプリ(チャットアプリ)で相手からのメッセージを受け、自動的に返信してくれる「チャットボット」と呼ばれるものである。最近では自然言語処理や人工知能(AI)に関する技術が進化したこと、さらにスマートフォンの普及によってメッセンジャーアプリが広く利用されるようになったことから、このチャットボットが大きな可能性を秘めた存在として注目されるようになったのである(写真1)。
なぜ、チャットボットに対する期待が高まっているのかというと、これまでWebサイトやアプリなどで、ユーザーが能動的に操作しなければ必要な情報にアクセスできなかったサービスが、会話をするだけでアクセスできるようになるからである。例えば通常のECサイトでは、自らECサイトにアクセスして購入したい商品を探し、カートに入れて決済するというのが一般的だ。慣れているサービスならともかく、慣れないECサイトで商品を購入しようとすると、目的の商品を見つけるまでに非常に手間がかかってしまう。
だがチャットボットを活用すれば、メッセンジャーアプリ上で専用のボットに対し、「味噌と醤油を注文したい」と話しかけるだけで指定した商品を注文でき、購入までの手間を大きく減らすことができる。さらにチャットボットを進化させれば、会話しながら商品の提案などもできるようになるなど、工夫次第でビジネスを大きく拡大できるだろう。さらに、商品の注文だけでなくレシピや医療情報の検索、さらには家電との連携など、様々な用途に活用できる可能性もある。
こうした仕組みは、会話しながら情報を検索できるアップルのパーソナルアシスタント「Siri」に近い部分もある。だがSiriが幅広い情報を扱う汎用的な存在であるのに対し、いま注目されているチャットボットは、普段利用しているメッセンジャーアプリの上で、自らのサービスに特化し独自のカスタマイズが可能なことから、ビジネス面での有益性が高いとして注目されている。