これまでキャリアのみが提供していた通話し放題サービス。だが今年に入り、MVNOとして通信事業を展開する楽天やプラスワンマーケティングなどが、5分間など時間制限はあるものの、通話定額を実現するサービスを相次いで投入し、注目を集めている。通話サービスの充実を図り一般ユーザーを取り込むMVNOが増えたことで、データ通信に重点を置く事業者が多いMVNOの意識は変わるだろうか。

時間限定ながら通話定額を実現した楽天

 2014年から2015年にかけて急増し、大きく注目を集めるようになったMVNO。大手キャリアから回線を借り、販売やサポートなどのコストを抑え、安価に利用できることから急速に利用者を増やしている。だが一方で、MVNOは回線を借りている立場であるため、提供できるサービスに限界があるというのも、また事実だ。

 中でもそのことを象徴しているのが、音声通話に関するサービスである。キャリアはMVNOに対し、30秒20円の従量制通話サービスしか提供していないため、MVNOの音声サービスは従量制で高額である、というのが半ば常識となっている。大手キャリアの音声通話が定額、もしくは5分間などの準定額で利用できるようになったことを考えれば、音声通話を頻繁に利用するユーザーにとって、どんなにデータ通信が安くても、MVNOのサービスは魅力的とは言えない状況が長く続いているのだ。

 そうした状況を改善するべく、MVNO側もIP電話を使ったり、プレフィックス番号による発信でキャリア以外のネットワークを通したりなどして、通話料を下げる工夫を続けていた。ニフティのように、同社の「NifMo」のユーザー向けに、IP電話で音声定額を実現する「NifMo でんわ」を提供するなど、より踏み込んだ取り組みをする事業者も出てきてはいる。だがこれも、IP電話であるがゆえにデータ通信料が発生するため、完全な定額を実現できるわけではなかった。

 しかしながら今年に入って、MVNOがIP電話以外の形で、短時間の音声通話を定額にするサービスを提供するケースが増えつつある。その口火を切ったのは、「楽天モバイル」を展開する楽天だ。

 同社は2016年1月28日から、通話アプリ「楽天でんわ」の楽天モバイルユーザー向けオプションサービスとして、「5分かけ放題」を提供している。これは文字通り、毎月850円の料金を追加で支払うことにより、5分以内の通話を定額にするというものだ(写真1)。

写真1●楽天は傘下の楽天コミュニケーションズのネットワークを活用し、5分間の定額通話を実現する「5分かけ放題」を提供している。写真は1月28日の楽天モバイル新サービス発表会より(筆者撮影)
写真1●楽天は傘下の楽天コミュニケーションズのネットワークを活用し、5分間の定額通話を実現する「5分かけ放題」を提供している。写真は1月28日の楽天モバイル新サービス発表会より(筆者撮影)
[画像のクリックで拡大表示]

 楽天でんわのアプリを使って通話する必要があるものの、IP電話ではないのでデータ通信料はかからないし、音質も通常の音声通話と変わらない。加えて5分を超えた時の通話料が30秒10円となることから、キャリアの5分間通話プランよりも料金面ではお得になっている。