KDDIは2017年3月14日、アクセンチュアとの共同出資による子会社「ARISE analytics」を設立したと発表した。KDDIが持つビッグデータを分析し、顧客体験価値の向上を図っていくとしている。ビッグデータの活用がauの利用者、ひいてはKDDIの今後に、一体どのような価値をもたらすのだろうか。

ビッグデータ分析で合弁会社を設立

 ここ最近の総務省の施策によって、大手キャリア同士のユーザー奪い合い競争が事実上できなくなった。そのため各キャリアは最近、価格施策によってユーザーを獲得する「攻めの戦略」から、既存顧客の満足度を高めて流出を防ぐ「守りの戦略」へとシフトを図っている。

 KDDIも、攻めから守りへと明確に戦略をシフトしたキャリアの1つだ。同社は2015年から「お客さま体験価値向上プロジェクト」を立ち上げ、顧客体験価値を高めるための取り組みを強化。2016年には、それまであまり重視しなかったau携帯電話事業の長期利用者に対して、ポイント還元などの優遇策を提供するプログラム「au STAR」を開始するなどして、既存顧客に対するサポートの強化を図っている。

 そのKDDIが、顧客体験価値を高める新たな取り組みとして、3月14日に打ち出したのがアクセンチュアとの合弁である。両社はデータアナリティクスを手掛ける合弁会社「ARISE analytics」を設立したと発表。KDDIが持つビッグデータを収集・管理・分析し、顧客体験価値の向上などに役立てるとしている。この合弁会社は、KDDIが85%、アクセンチュアが15%出資しており、今年の2月27日に設立したとのことだ。

KDDIとアクセンチュアは合弁で「ARISE analytics」を設立。KDDIが保有するビッグデータを分析し、顧客体験価値向上などにつなげるとしている。写真は3月14日にKDDIが開いたデータアナリティクス活用に関する記者説明会より(筆者撮影)
KDDIとアクセンチュアは合弁で「ARISE analytics」を設立。KDDIが保有するビッグデータを分析し、顧客体験価値向上などにつなげるとしている。写真は3月14日にKDDIが開いたデータアナリティクス活用に関する記者説明会より(筆者撮影)
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 KDDIはグループ全体で約4000万の顧客を抱えていることから、サービス利用や行動などによってもたらされる膨大なデータを持つ。そうしたデータを合弁会社で人工知能(AI)など活用して分析する。

 データアナリティクスはKDDI自身もこれまで手掛けていたが、提供するサービスが多岐にわたるようになってデータの種類も増え、グループ間での管理や活用が複雑になっていたという。そうした理由から、最新技術によるデータアナリティクスで実績を持つアクセンチュアと組み、グループ内のデータ管理を合弁会社に集中させて、より高度なデータ解析を実現する環境を作るに至ったようだ。