米アマゾンがプライム会員向けのサービスを拡大して著しい躍進を遂げている。それを迎え撃つ楽天やヤフーといった日本の主要EC事業者も、スマートフォンユーザーに対するお得さを打ち出すことで事業拡大を進めている。大手EC事業者同士の競争は、周辺事業を巻き込み、大きな変化を見せつつある。

プライム会員向けサービス強化でアマゾンが躍進

 ここ数年来、大手同士によるEC事業の争いが急加速しているが、中でも躍進が著しいのがEC事業最大手の米アマゾンである。アマゾンは最近、年額3900円の有料会員制サービス「Amazonプライム」の会員獲得に力を入れており、プライム会員向けに利便性の高いサービスを提供することで利用者を拡大してきた。

 プライム会員になると、いち早く商品を届ける「お急ぎ便」や、指定の日時に商品を届ける「お届け日時指定便」が利用できるほか、食品や日用品などを1点から購入できる「Amazonパントリー」など、買い物が便利になる様々なサービスが利用可能になる。最近では、専用のボタンを押すだけで、日用消耗品など特定の商品をすぐ注文できる「Amazon Dash Button」が大きな話題となった。

 ECに関連するサービスだけでなく、映画などが見放題になる映像配信サービス「プライム・ビデオ」や、100万曲以上の音楽を楽しめる音楽配信サービス「Prime Music」、さらには写真を容量無制限で保存できる「プライム・フォト」など、会員向けのコンテンツやサービスの充実も、プライム会員の獲得につなげようとしている(写真1)。ここ最近、テレビでプライム・ビデオなどのサービスを利用するのに必要な「Fire TV」「Fire TV Stick」などの機器が品薄となっていることからも、その人気と注目の高さを見て取ることができるだろう。

写真1●アマゾンは動画配信の「プライム・ビデオ」など、プライム会員向けサービスの強化を進め、好評を得ている。「Fire TV」などは、最近品薄になるほどの人気のようだ。写真は2015年9月24日のアマゾン発表会より(筆者撮影)
写真1●アマゾンは動画配信の「プライム・ビデオ」など、プライム会員向けサービスの強化を進め、好評を得ている。「Fire TV」などは、最近品薄になるほどの人気のようだ。写真は2015年9月24日のアマゾン発表会より(筆者撮影)
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期待高まる音声アシスタント「Alexa」の国内展開

 一方で、アマゾンはスタートアップの商品を扱う「Amazon Launchpad」を、2017年1月18日に開始。スタートアップの支援に加え、日用品などを求めるユーザーだけでなく、“尖った”商品に興味を示すユーザーの取り込みにも動くなど、幅広いビジネスを展開しようとしているようだ。

 さらに今後を考えるならば、現在米国で大きな注目を集めている、音声認識アシスタント「Alexa」を搭載したスピーカー「Amazon Echo」の日本上陸が期待されるところだ。Amazon Echoの日本上陸には、Alexaの日本語対応が必須であり、日本での展開にめどが立っているわけではない。

 だが、Amazon Echoを用いれば、スマートフォンなどを見る必要なく、自宅で声をかけるだけで商品の注文なども可能になる。普及すれば大きなインパクトを与えるだろう。