ここ数年来停滞傾向にあったモバイル決済。だが2016年10月、米アップルがiPhone 7やiPhone 7 PlusにFeliCaを搭載し、独自のモバイル決済サービス「Apple Pay」を国内で開始。加えて12月には米グーグルも「Android Pay」の日本展開を開始したことから、再び注目度を高めている。両者があえてFeliCaに対応し、日本市場へ本格進出を果たした理由はどこにあるのか。

サプライズだったApple PayのFeliCa対応

 2016年にモバイル関連サービスでひときわ大きなインパクトを与えたのは、モバイル決済の分野ではないだろうか。モバイル決済といえば、国内でのiPhoneのシェアが増えるに従い、主に使われてきた「おサイフケータイ」の利用が年々減少し、関心が大きく落ちていた分野だ。だがそのモバイル決済の分野で、2016年は非常に大きな動きが相次いで起きたのだ。

 中でも注目されたのは、アップルが2016年発売のiPhone 7とiPhone 7 Plusに非接触ICカード方式のFeliCaを新たに採用し、日本でApple Payの提供を開始したことだ(写真1)。FeliCaは日本以外で採用されている国や地域がほとんど無く、国内メーカーや、国内大手キャリアと取引のある一部の海外メーカー以外、採用するケースはほぼ存在しなかっただけに、インパクトは非常に大きいものがあった。

写真1●iPhone 7/7 PlusにFeliCaが搭載され、日本でもApple Payによる非接触決済が利用できるようになったことは、非常に大きなインパクトを与えた。写真はアップルのプレスリリースより
写真1●iPhone 7/7 PlusにFeliCaが搭載され、日本でもApple Payによる非接触決済が利用できるようになったことは、非常に大きなインパクトを与えた。写真はアップルのプレスリリースより
出所:アップル(http://www.apple.com/newsroom/2016/09/apple-pay-coming-to-japan-with-iphone-7.html)
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 もっとも日本におけるApple Payは、Suicaのほか、iDやQUICPayなど既存のFeliCaベースの決済基盤を用いている。それゆえ日本でApple Payが利用できるのは、日本で発売されたFeliCa対応のiPhone 7/7 Plusに限られる。海外で発売されるものはFeliCaを搭載していないため、日本国内に持ち込んでもApple Payを利用できない。

 だがそれでもなお、国内でiPhoneがApple Payに対応したことは、日本のスマートフォンユーザーの約半数が、将来的にモバイル決済に対応した端末を持つ可能性があるという意味でも、与えた影響は非常に大きい。Apple Pay国内開始を契機として、モバイル決済が再び息を吹き返すことができるか、2017年は注目されるところだ。

 ほかの電子マネーサービスのApple Pay対応が進むかどうかも、2017年は期待されるポイントとなるだろう。Apple Payを実際に使ってみると、Suicaの実装に関しては独自色がかなり強く、ほかのサービスへの対応は難しいようにも見える。それだけにアップルや、Suica以外の電子マネーサービスを提供する事業者が、対応に向けて今後どのような動きを見せるかは興味深い。