ここ最近、人工知能(AI)の利用が急速に進みつつある。その活用法を見るとまだ限定的な部分が多いものの、クラウドなどの技術の影響もあって、AI自体はかつてと比べ大幅に進歩している。今後、AIが我々の生活に大きな影響を与える存在となっていくのだろうか。

ソフトバンクグループがAIの導入を積極化

 昨年の2015年、ハード面に関する取り組みで注目されたのは、前回触れたIoT(Internet of Things、モノのインターネット)などが挙げられるが、ソフト面で注目された要素の1つとしては「AI」が挙げられるだろう。実際、昨年はコンシューマー向けの製品に、様々な形でAIが組み込まれ、それが大きくアピールされる機会が多かったように感じる。

写真1●昨年より一般発売されたソフトバンクロボティクスの「Pepper」は、脳内のホルモンバランスを疑似的に再現し、感情を持たせる仕組みを導入している。写真は2015年6月18日のPepper発売開始イベントより(筆者撮影)
写真1●昨年より一般発売されたソフトバンクロボティクスの「Pepper」は、脳内のホルモンバランスを疑似的に再現し、感情を持たせる仕組みを導入している。写真は2015年6月18日のPepper発売開始イベントより(筆者撮影)
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 中でもそのことを象徴しているのがソフトバンクグループの動きである。昨年はグループ全体で、AIに関する取り組みを増やしていた。中でも、ソフトバンクグループとAIと聞いて、多くの人が思い起こすのは、ソフトバンクロボティクスが手掛ける人型ロボットの「Pepper」ではないだろうか(写真1)。

 Pepperが発表されたのは2014年だが、当時は人間の感情を認識する機能しか搭載されていなかった。だが昨年6月の一般販売に合わせて、新たに脳のホルモンバランスを疑似的に再現し、ロボットが外部から得た情報を基にした感情を持つエンジンを搭載したことから、より大きな注目を集めた。Pepperは現在も発売後すぐ品切れとなってしまうなど、好調な販売が続いている。

 より身近、かつ実用的なところでのAIの事例を挙げるならば、iOSの「Siri」や、Andoridの「Google Now」に代表されるパーソナルアシスタント機能がある。特に昨年は、iOS、Android共に新しいバージョンで、パーソナルアシスタント機能を強化してきたことが印象的であった。

 例えば、グーグルはAndroid 6.0で、ユーザーが現在見ているものなどから行動を予測し、曖昧な問いかけにも確実に応えてくれる「Now on Tap」を導入している。またアップルもiOS 9で、スマートフォンの操作や現在の位置などから、ユーザーの行動を予測して必要な情報を提供する「Proactive Assistant」を導入し、Siriの実用性をより高める取り組みを進めている。