個人が所有するモノをインターネット経由で貸し借りする、「シェアリングエコノミー」と呼ぶサービスが人気を集めている。大量生産・大量消費の従来型経済とは異なる市場を切り開くと期待を集める一方、既存の法規制に合わない「グレーゾーン」との指摘もある。2015年4月8日に開催された「新経済サミット2015」には、空き部屋を貸し借りする米エアビーアンドビーと自動車の相乗りを仲介する米リフトの共同創業者が登壇(写真1)。これまでにないサービスを浸透させるには誠意を持って規制当局と対話することが重要との認識を示した。
登壇したのは米エアビーアンドビーのCTO(最高技術責任者)兼共同創設者のネイサン・ブレチャージク氏と、米リフトの共同創業者兼社長であるジョン・ジマー氏。そして自民党で規制緩和やIT利活用促進を提言するIT戦略特命委員会の事務局長を務めるふくだ峰之衆議院議員も加わった。
エアビーアンドビーの創業は2008年。日本を含む世界190カ国でサービスを提供しており、空き部屋の登録件数は100万件を超えるという。空き部屋を所有する貸し主は物件の情報や貸出料金などを同社サイトに登録。借り主は気に入った物件を探せる。一方のリフトが提供するのは「ライドシェア」と呼ぶ、自動車の相乗りサービスだ。2012年に創業し、現在は米国内でのみサービスを提供している。この3月には楽天が3億ドルを出資すると発表した。
いずれも見知らぬ人同士が部屋や自動車を貸し借りするサービス。エアビーアンドビーのブレチャージク氏は、FacebookをはじめとするSNSの普及がサービスの成立に不可欠だったと述べた。「SNSの登場以前には、インターネット上で利用者のアイデンティティーを確認する手段は乏しかった。Facebookには利用者の実名や写真があり、これを使って相手を確認することにした」。
2人の創業者はともに成長への期待を口にした。「ライドシェアは渋滞の緩和や移動コストの削減に寄与できる新しいサービス。まだリフトを提供しているのはまだ米国だけだが、日本にもぜひ進出したい」(ジマー氏)。エアビーアンドビーのブレチャージク氏も、「当社のサービスは始まったばかりで、事業規模は現在の100倍になってもまだ小さいと考えている」と述べた(写真2)。