写真1●右からAIA代表理事の木下氏、たからのやま社長の奥田氏、グリーンバレー理事長の大南氏、内閣府副大臣の平氏、富山県南砺市長の田中氏
写真1●右からAIA代表理事の木下氏、たからのやま社長の奥田氏、グリーンバレー理事長の大南氏、内閣府副大臣の平氏、富山県南砺市長の田中氏
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写真2●平副大臣(中央)は「政府のビッグデータを地方の成長モデルに生かしてほしい」と語る
写真2●平副大臣(中央)は「政府のビッグデータを地方の成長モデルに生かしてほしい」と語る
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 安倍政権が重点政策としても掲げる「地方創生」。古くて新しいこのテーマに企業や自治体はどう取り組むべきか。2015年4月8日に開催された「新経済サミット2015」で、地方活性化に取り組んできた団体や地方自治体の首長が議論した(写真1)。登壇者が強調したのが、人の流れを生むことの重要性だ。ITを積極活用しヒト、モノ、カネ、情報の地域間格差を縮小。地方の持続的な成長を後押しできるとした。

 セッションのテーマは「儲かる地方のつくりかた」。議論の口火を切ったのは内閣府の平将明副大臣だ(写真2)。「地方はビジネスチャンスにあふれている」と指摘。自治体の抱える多様なデータの開放や規制緩和を通じて、地方での創業を積極的に後押しする考えを示した。

 「地方の問題点は人の流れが途絶えていることだ」。こう指摘したのはNPO法人グリーンバレーの大南信也理事長。「人が回る仕組みを作る」ことでカネもモノも流れるようになるという。

 大南氏が理事長を務めるグリーンバレーは、徳島県神山町に本拠を置く。大南氏は仕事を持つ人たちの神山町への移住を2008年ごろから促進。2010年にはITベンチャー企業がサテライトオフィスを開いた。それまでなかった人の流れを作ると、地元産の野菜を使ったビストロやゲストハウスといった「いままでは成立しなかったサービス産業が生まれた」(大南氏)。

 日本全国の街や公共施設、社会インフラ。800兆円ともいわれるこうした社会資本を利用して地方に人を引きつける活動をしているのが、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス(AIA)の木下斉代表理事だ。使われていない民家をリノベーションしてオフィスや店舗に改装。地方に新しい企業や個人事業主が入ってくる支援をしている。木下氏はこれまでの地方活性化策の問題点を「金を稼ぐ気のない人たちが主導していたこと」と指摘する。「重要なのは地方を会社組織に見立て、黒字になる事業をすることだ」(木下氏)。

 富山県南砺市の田中幹夫市長も、人が集まる仕組み作りに取り組んでいる。南砺市には「エコビレッジ構想」の名の下、10数年前からアニメ製作会社などに勤めるクリエーターの移住を進めているという。耕作放棄地を活用し、居住地の燃料は林業でまかなう。当初は6人ほどで始まったが、現在の移住者は60人ほどに増えた。「目標は200人ほど。わくわくした地域を作りたい」(田中市長)。