NTTとJTBが福岡市とその周辺で実施している訪日観光客向けサービスの実証実験「地域活性化トライアル」(福岡トライアル)の全貌を解説する本特集。第3回は、観光客が自分のスマートフォンやタブレットなどから接続する公衆Wi-Fiサービスを分析する。

 福岡トライアルでは、先進的に無料の公衆Wi-Fiサービスを展開していた福岡市のサービスと、NTTグループのWi-Fiサービスを組み合わせている。2015年3月末時点で利用できる拠点は1037で、アクセスポイント(AP)数は1333。一部からは「まだ海外で整備されているWi-Fi環境には物足りない」という指摘もあるものの、一部の制約を取り払うことでユーザーの利便性を高められた。通信インフラの整備は、海外からの観光客を現地に呼び込むうえで重要なアピールポイントとなる。

利用期限を変更した直後に認証数が急増

 まずトライアルの現場となった、福岡市のWi-Fiの状況を見てみよう。福岡市の公衆無線LANサービス「Fukuoka City Wi-Fi」は2012年4月に始まった(写真1)。

写真1●Fukuoka City Wi-Fiを運営する福岡市の庁舎
写真1●Fukuoka City Wi-Fiを運営する福岡市の庁舎
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 「無線LANの配備」は、高島宗一郎・現福岡市長が2010年11月の市長選挙(1期目)の際に公約の4番目として掲げていたもの。地下鉄の全駅や博多港国際ターミナル、観光案内所といった市関連施設と、ホテルや福岡空港、バスターミナルなどの民間施設をカバーする。2015年3月末時点で福岡市内で76カ所、345APを利用できる。

 今回のトライアルに福岡市は、観光PRとWi-Fi環境の整備がもたらす新ビジネスの展開を目指して参画したという。2020年には、日本を訪れる海外からの観光客が東京五輪の前後に、国内のほかの観光地を回遊することを期待できる。そこで無料でWi-Fiを使える環境を整備しそれをPRすることで、訪日観光客から選ばれるきっかけの一つにしたいという思惑があった。