NTTグループとJTBグループは2015年4月末まで、福岡市周辺で訪日観光客向けの観光サービスの実証実験「地域活性化トライアル」(以下、福岡トライアル)を実施している(写真1)。2014年10月14日からスタートした同トライアルは、無線LAN(Wi-Fi)を通信インフラとして活用し、主に海外からの訪日観光客に向けて、スマートフォン/タブレット向けのアプリケーションを通じた観光体験を提供している。

写真1●福岡市天神周辺(左)と、天神にある福岡市観光案内所近くに設置された無線LANアクセスポイント
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写真1●福岡市天神周辺(左)と、天神にある福岡市観光案内所近くに設置された無線LANアクセスポイント
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写真1●福岡市天神周辺(左)と、天神にある福岡市観光案内所近くに設置された無線LANアクセスポイント

 NTTグループは、2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピック競技大会(東京五輪)で「ゴールドパートナー」の第1号として東京五輪組織委員会と契約を結び、通信サービスを担当することを決めている。訪日観光客向けの観光サービスを提供する福岡トライアルは、2020年のプロトタイプともいえる。その延長線上には、東京五輪で来日する観光客への「おもてなし」として実践されるサービスのひな型的な要素がいくつか見えている。

 4回で構成する本特集の第1回は、福岡トライアルの全体像と、NTTとともにトライアルを主導しているJTBの狙いを解説する。

スマホアプリとWi-Fi、ビッグデータを駆使

 トライアルの大前提は、外国人観光客などユーザーが所有するスマートフォンやタブレットを端末とするところ。ユーザーが使い慣れた自分の端末に専用アプリをダウンロードして使ってもらうことで、快適な利用の演出を目指した。

 アウンコンサルティングの調査によるとスマートフォンの普及率は韓国で73.0%、米国で56.4%、台湾で50.8%、中国は46.9%という(今回のトライアルが対象とした主な国と地域の普及率)。端末にアプリをインストールする使い方が世界的に広く定着しており、本トライアルもそれを前提にサービスをデザインした。

 この端末にインストールする専用アプリ「J Guidest Fukuoka」は、JTBグループのJTB総合研究所とNTTアドが中心となって開発した。Wi-Fiの基地局などから得られる位置情報と統計化したユーザーの属性情報を使い、最適な観光情報を提供する。同アプリには2015年3月末時点で約1万9000人が登録したという(詳しくは第2回で解説)。

 端末からの通信インフラとして活用したのは、福岡市の「Fukuoka City Wi-Fi」を中心とした公衆Wi-Fiサービス。訪日観光客が日本に滞在している期間、Wi-Fi機能を活用してネットにアクセスしサービスを利用することを想定している。