「初代arrowheadの開発は、処理速度を高めるのが至上命題だった。今回は、市場の安定性確保を最大の目標に掲げている」――。日本取引所グループ傘下の東京証券取引所(東証)の川井洋毅IT開発部 トレーディングシステム部長は、こう語る。
東証が取り組んでいるのは、株式売買システム「arrowhead」の刷新だ(図1)。既にベンダー側の開発作業は完了し、2015年9月24日の本番稼働に向けて今は、東証側が確認テストを進めている。
売買システムの潮目が変わる
刷新プロジェクトのスローガンは「Never Stop」。売買システムの信頼性を高めると同時に、市場での安定取引を保つ機能を盛り込む。
数年前まで世界の取引所は、ひたすら処理スピードを競ってきた。東証も例外ではない。初代arrowheadを開発した際の掛け声は、「Challenge “10”msec」。世界の取引所に追い付くため、10ミリ(100分の1)秒未満の注文応答速度を目指した。結果、目標を上回る2ミリ秒(1000分の2)を実現、2010年1月4日に本番稼働に至った。
ところが、「アルゴリズム取引」と呼ぶプログラムによる自動発注の急拡大が、風潮を変えつつある。自動発注が抱える負の側面が明らかになってきたからだ。