キリンは、仮想デスクトップによるシンクライアント環境を全面導入した。PC約1万4000台分を仮想化し、データセンターに収容。従業員による管理の手間を省き、業務に専念できるようにした。酒席が多い事情を踏まえ、PC紛失に伴う情報漏洩リスクを低減する狙いもある。

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 キリンは、2014年末までに従業員が使うクライアント端末のほぼ全数に当たる約1万4000台分を、デスクトップ仮想化技術によるシンクライアント環境に移行した。コールセンターや金融営業など限られた業務分野で導入する例はよくある。だが、キリンのように1万台以上の規模で全社導入に踏み切る例は珍しい。

 キリンホールディングス傘下の国内事業統括会社であるキリンと、さらにその傘下の事業会社であるキリンビール、メルシャン、キリンビバレッジの4社に導入。Windows XPのサポート終了への対応と同時に、ワークスタイル変革と運用コストの削減を狙った。売上高1兆1529億円(2014年12月期)の事業運営を支えることになる。

 「セキュリティ強化と利便性向上のためには、シンクライアントが最適だった」。システム子会社であるキリンビジネスシステム 情報技術統轄部 インフラ技術管理グループの門田晴裕部長はこう話す。

10年使い続けたXPから脱却

 キリンはインフラに関わるIT投資は徹底して抑制し、戦略的なIT投資に振り向ける方針を取っている。この方針に沿って、2002年頃に導入した全社標準のWindows XPのPCを運用し続けてきた。

 コスト抑制の目的でなるべく長く同じPCを使うため、Vistaや7などへの移行は見送ってきたが、さすがに10年が経過し、老朽化による動作不良などが目立ってきた。そこでWindows8が発売された2012年末頃から、クライアント環境刷新を計画。シンクライアントを全面採用した。システム構築はNTTデータと日本IBMが担当した。

 シンクライアントとしてレノボ・ジャパンのWindowsノートPC「ThinkPad X230i」を約1万2000台採用した(図1)。NTTデータ 第四法人事業本部 KIRINビジネス事業部 開発統括部 第一システム担当の古賀篤部長は、「検討時点ではシンクライアントに特化した安価で軽量なマシンがなかったので、一般的なPCの中から選定した」と説明する。

図1●キリングループ4社が導入したシンクライアントの構成
図1●キリングループ4社が導入したシンクライアントの構成
1万4000台分のPCを仮想デスクトップ環境へ移行
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