「Excelシートに売り上げ上位と下位の店舗を並べ、商品担当者が1カ所ずつチェックしながら商品在庫を店舗間で移動させるかどうかを決めていた。こうした非効率な業務を改善する必要があった」──。AOKIホールディングス情報システム本部の原賢太朗部長は、こう振り返る。

 紳士服大手のAOKIは2012年以降、老朽化した情報システムの刷新プロジェクトを次々と進めてきた(図1)。

図1 AOKIが2012年度から進めてきた主なシステム刷新
6月にMDシステムを刷新
図1 AOKIが2012年度から進めてきた主なシステム刷新
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 2015年6月には、在庫計画、アパレルメーカーへの製造発注、店舗在庫管理などの機能を持つ、同社の基幹業務システムであるMD(マーチャンダイジング)システムを約12億円掛けて刷新。古いシステムが足かせとなり、時間が掛かっていた販売分析や店頭での在庫照会を効率化した。

 開発プロセスの工夫とシステム刷新による運用コストの削減が奏功し、「例年並みのシステム予算で済ませられた」と原部長は満足げに語る。

矢継ぎ早にシステムを刷新

 AOKIは紳士服や婦人服を中心としたファッション商品の企画、販売を手掛ける。主力店舗の「AOKI」は全国で557店、20~40歳代の男性女性を主なターゲットとする「ORIHICA」を141店舗展開しており(2015年3月時点)、2014年度だけで計50店舗を新規出店するなど、出店攻勢を強めている。

 消費増税などの影響があった2015年3月期の売上高は約1127億円と前年度比3.5%の減収となったが、既存店の顧客単価アップと新規出店で、2016年3月期は4.5%の増収を見込む。

 反転攻勢の準備は整いつつある。売り上げ拡大を支える情報システムの整備に一定のメドをつけたのだ。

 「社内でどんなシステムが稼働しているかさえ把握し切れていない状態だった」(原部長)という2012年に情報システム部門の要員入れ替えを断行。2017年度までのシステム化ロードマップを作成した上で、矢継ぎ早にシステム刷新を進めてきた。

 2014年6月に新CRM(顧客関係管理)システムを構築し、ポイントカード会員やメールマガジン会員などで分散していた顧客情報を一元化。同年10月には役員、エリアマネジャー、店長といったマネジメント層向けの経営ダッシュボードを稼働させた。

 店舗ごとの売上高、粗利、客数、客単価といった情報を5分おきに更新。これを使うことで、改善策をスピーディーに打てる。

 こうした取り組みを経て刷新したのが、前出のMDシステムである。