データ通信専用の「格安SIM」をパイプとして使って、企業が電話のコスト削減や利便性向上を図ることが可能になっている。その手段には、「050番号によるIP電話サービスを使う方法」と「ユーザーが自由に設定できる内線電話番号を使う方法」がある。格安SIMを企業ネットワークで活用する特集の第2回に当たる今回は、それぞれの手段を解説した後、筆者が企業ユーザーやMVNOに推奨したい格安SIMベースのIPテレフォニーのモデルを紹介する。

IP電話のデータ通信容量は無視できるレベル

 050番号はIP電話網を使った電話サービスに電話番号を付与するため、総務省が定める電気通信規則で2002年に電気通信事業者への割り当て条件が決められた。同規則ではIP電話の通信品質クラスをクラスA(固定電話並み)、クラスB(携帯電話並み)、クラスC(通話可能)の三つに分類している。

 クラスAは「03」や「06」から始まる「0AB-J番号」を割り当てられる品質クラスであり、遅延時間が100ミリ秒未満、総合音声伝送品質(R値)が80超、電話番号の位置の固定などが条件となっている。クラスBは遅延時間150ミリ秒未満、R値70超である。

 クラスCは遅延時間400ミリ秒未満、R値50超で位置の固定は不要である。050番号はクラスCを満たせば利用できる。2014年12月末現在、050番号を使ったIP電話の契約数は723万契約となっている。

 050番号のIP電話は長らくインターネットサービスプロバイダーなどが安価に利用できる固定電話(クラスAではないので厳密には固定電話ではない)としてサービスを提供してきた。新しい発想で050番号を使ったのが2011年にサービスが始まったNTTコミュニケーションズ(NTTコム)の「050plus」である。

 050plusはスマートフォン(スマホ)に通話アプリ(ソフトフォン)をダウンロードし、それに050番号を付与する。090などの番号で始まる回線交換網やVoLTE(Voice over LTE)は使わず、パケット網(LTE/3G)+インターネットを使って通話する。NTTコムのWebサイトにスマホでアクセスし、アプリのダウンロードから、電話番号の選択、クレジットカードの登録まで、ものの3分程度で利用できる。解約も簡単である。もちろん、スマホにつながる回線はNTTドコモであれ、ソフトバンクモバイルであれキャリアを問わない。

 NTTコムは携帯電話事業者のパケット網をパイプとしてちゃっかり借用して、自社の電話サービスを提供していることになる。パケット網しか使わないので、データ通信専用の格安SIMで使えるのが大きなメリットだ。

 月額基本料は324円(税込み)、050plus同士やNTTコムと提携している050電話との通話は無料。固定電話への通話は3分8.64円(税込み)、携帯電話は1分17.28円(税込み)である。格安SIMの一般的な音声サービス通話料と比べると、対携帯電話は半分以下、対固定電話は10分の1以下となる。