「この店では何が食べられるのだろう」「なぜこの場所には行列ができているのか」――。日本語の看板や案内表示だけでは、街歩き中の訪日外国人には分からないことだらけ。せっかくの名所や名店も、素通りされてしまう。

 そこで、外国人旅行客に街の案内を多言語で届ける試みが始まっている。強力なツールになるのが、スマートフォンだ。今や外国人旅行客の多くが、スマートフォンを片手に観光を楽しんでいる。街歩きの途中、スマートフォンの画面を使って街の魅力を伝えることで、じっくり観光を楽しんでもらう狙いがある。

商店街の魅力を36カ国語で発信

 小田急線の経堂駅から東京農業大学方面に向かって伸びる、経堂農大通り商店街(写真1)。60年以上の歴史を持つ、東京・世田谷区の商店街だ。2014年10月1日、ビーコンを使って店舗の情報を多言語で発信するサービスを開始した。

写真1●東京・世田谷にある、経堂農大通り商店街
写真1●東京・世田谷にある、経堂農大通り商店街
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 ビーコンとは、Bluetoothなどを利用して数メートルの領域で距離に応じて情報を発信する仕組みである。店舗には、信号を発信する端末を置いておく(写真2)。近くを通った人のスマートフォンに専用アプリがインストールされていれば、店舗の宣伝などを36カ国語で表示できる(写真3)。iPhoneの言語設定に応じて、表示言語が切り替わる。

写真2●右端の台の奥にある青色のシールが貼られた黒い箱が、信号の発信端末。アプリックスの製品を採用する
写真2●右端の台の奥にある青色のシールが貼られた黒い箱が、信号の発信端末。アプリックスの製品を採用する
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写真3●ラーメン店の前で、メニューを表示しているところ
写真3●ラーメン店の前で、メニューを表示しているところ
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