システム基盤に関する構築、改修、拡張のスピードが上がり、コスト削減も期待できる―。

 このように、AWSのメリットは大きいものの、企業情報システムの場合、情報系や基幹系などのすべてを一度にAWSに移行するのは、資産償却やプロジェクトリスクの観点から、現実的ではないだろう。そのためAWSに適した一部のシステムを移行し、オンプレミス環境とのハイブリッド構成にするのが、多くのユーザー企業にとって現実解となっている。

 そこで重要になるのが、データ連携である。オンプレミス環境とAWSに、システムを分散配置することになるので、その間でうまくデータ連携をする仕組みを構築しないと、性能のボトルネックになったり、運用性を下げたりしかねない。その際、単一拠点内におけるデータ連携の仕組みがそのまま通用しないことがある。AWSの制約、ネットワーク構成の変更、ネットワークの遅延などがあるからだ。

 ここでは、ハイブリッド構成にした上で安定運用できるようにすることを目的として、データ連携の仕組み作りの手順を解説する。その手順は、「1.要件定義と問題対処」「2. ネットワーク方式の選定」「3. データ連携ツールの選定」という三つのステップで大きく構成される。以降で、順に見ていこう。